「官邸主導になってから日本経済は成長していない」森永卓郎さんが考えるキャリア官僚の人気が下がった理由

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昨年来、公務員の「週休3日制」の導入が加速している。発端は2023年に、人事院が内閣府へ国家公務員の週休3日制を勧告したこと。

今年4月から本格導入の運びとなったが、この流れが地方に波及し昨年6月には千葉県が地方公務員にこの制度を導入。年末には東京都が2025年度からの導入を発表したことで拍車がかかり、次々と手を上げる地方自治体が増え続けている。

だが、この制度の導入に異を唱えていたのが、今年1月に亡くなった経済アナリストの森永卓郎氏だ。

週刊実話2023年5月11・18日号掲載「国家公務員の週休3日制」より  ※肩書などは当時のもの

週休3日制を導入する民間企業はわずか2%

4月14日付の日本経済新聞が「国家公務員、週休3日制拡大」と伝えた。

新卒者の「霞が関離れ」を食い止めるために、多様な働き方を認めるのだという。今夏の人事院勧告に盛り込む方向で、検討するとのことだ。

確かに、霞が関の官僚となるための国家公務員総合職への応募者が、減少傾向にあることは事実だ。ただ、それでも応募倍率は10倍程度の狭き門になっている。

また、総合職で採用されるのは1200人程度で、国家公務員に採用される人数の1割強にすぎない。日本の未来を左右するエリート中のエリートが、国家公務員総合職、キャリア官僚なのだ。

だが、その人気が下がっていることを口実に、公務員全体に週休3日制を導入するのはいかがなものか。週休3日制を導入している民間企業は、わずか2%しかないのが現状なのだ。

じつは同じようなことが、国家公務員の定年延長でも起きている。

今年から国家公務員の定年を65歳へと、2年に1歳ずつ延長する制度改正が始まった。民間企業で65歳以上の定年を定めている企業は、25%しかない。

さらに国家公務員の賃金は、民間企業より3割も高くなっている。定年延長にしても、週休3日制にしても、高賃金にしても、人事院のやっていることは、お手盛りとも言えるものだ。

私は、キャリア官僚の人気が下がっている理由は、仕事がつまらなくなっていることと、残業代が支払われないことだと思う。

昔から残業代は支払われなかったが、その分、退官後の天下り先での処遇で、十分に元が取れていた。

いまは天下りのあっせんが禁じられ、退職後の保証がなくなってしまった。天下りを復活させることはできないから、官僚には働いたら働いた分だけ、賃金を支払えばよい。

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