「官邸主導になってから日本経済は成長していない」森永卓郎さんが考えるキャリア官僚の人気が下がった理由



「休まず、遅れず、働かず」が蔓延

もちろん官僚の長時間労働は、やりがいのある仕事とセットでなければならない。

政治家は戦略を決め、官僚はそれを実現する戦術を決める。それが、かつての政治家と官僚の関係だった。仕事を任せられていたから、官僚は睡眠時間を削ってでも、一生懸命に働いたのだ。

ところが、小泉純一郎政権の時代から官邸主導が強まり、細かな政策まで官邸が決めるようになった。その結果、官僚は官邸に言われるままに働くようになり、仕事がつまらなくなってしまったのだ。

その構造は、岸田文雄政権でも続いている。それどころか、むしろ強まっている。

防衛費と少子化予算の倍増に伴う増税、新型コロナの5類への移行、原発回帰など、官邸が具体的な政策を決めて、官僚はその後始末に追われている。

そして、とどのつまりがチャットGPTの活用だ。政府は国会答弁の作成で、対話型人工知能の活用を検討する方針を明らかにした。

国会答弁の作成で官僚の英知を集めるのではなく、それっぽい答弁ができればよいという考えは、官僚どころか国会審議まで馬鹿にしているとしか思えない。

私は、いまの日本が昔の社会主義国に似てきていると思う。官僚は権力者の顔色ばかりうかがって、自ら考えることをしない。民間よりもずっとよい処遇と利権を失いたくないからだ。

そして「休まず、遅れず、働かず」が蔓延する。そんなことをやっていたから、社会主義国の経済は駄目になっていった。

官邸主導になってから日本経済は成長していないが、これは偶然の一致と言えるのだろうか。

森永卓郎 最後の提言』(小社刊)より