“オールドメディアで世界を目指す”カルロス矢吹が狂おしいほど嫉妬した『新しい学校のリーダーズ』LA公演

「ジャンルはなんであれ、世界なんです」

周りの同業者はどんどん出世していき立ち止まれば居場所はなくなってしまう。そんな恐怖はカルロスにはないという。たとえ不利になっても今一番楽しいことをやっていれば人は集まって来るということを知っているからだ。

「僕ね、2年前なんですけど、自分の中にある感情に初めて気付かされたことがあって。森合正範さんの『怪物に出会った日』(講談社)という井上尚弥に敗れたボクサーの本が文学賞を獲ったんですよ。
森合さん、昔からよく知っている人で、僕は嫉妬するのかなって思っていたら、予想外におめでとうって素直に喜べたんです。俺、文学賞とかに興味ないのかなって思ったんですよ。
じゃあ、何に嫉妬するのだろうかとインスタグラムをパッと見たら『新しい学校のリーダーズ』がLA公演を成功させていたんです。僕はそれを見て狂おしいほどに嫉妬したんですよ。そのときに、『ああ、俺は海外で売れてえんだ』って。
海外で働きたいとかじゃない。自分の好きなものが日本だけじゃなく、海外にも仕事先として広げられること。考えてみれば最初に出した本が韓国語で翻訳されたときにむちゃくちゃうれしかった。
逆に友達が出版した本が6カ国で翻訳されたって聞いたときはむちゃくちゃ嫉妬しました。ジャンルはなんであれ、世界なんです。元アーセナルの冨安健洋にすら嫉妬していますから」

カルロスが目指すところは世界。YouTubeなどの安易に国境を超えられるものじゃない。多くのプロフェッショナルたちの目と手が加わる本や舞台などのオールドメディアで、日本発の面白いコンテンツを世界に発信するということ。

長年、創造することを仕事にしていると才能が枯れることを感じる。しかし本当に枯れているのは、才能よりも自らの仕事が楽しめなくなっていることが原因ではないか。

カルロスはやっぱり今日も楽しそうで怪しい人だ。どこの業界にもいる、何をやっているのか分からない楽しそうな人は、世界でも通用する概念であると信じて進む。

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」8月21・28日合併号より