中森明菜のもっとも売れたシングルは?『少女A』からの“落差”が大ヒットの要因に

『少女A』では「絶対に歌わない!」と抵抗

1枚目が、来生えつこ・来生たかお姉弟による純愛系『スローモーション』。次にツッパリ系『少女A』。3枚目がまた来生姉弟の純愛系『セカンド・ラブ』。そして4枚目がまたツッパリ系の『1/2の神話』――。

まるでシーソーゲームのように、ツッパリと純愛のイメージを行き来することによる「落差物語」をうまく利用して、人気を固めていったのですから。

さらに、楽曲に対する本人の気分・意志も働いたはずです。

『少女A』を初めて聴いたとき、中森明菜は「絶対に歌わない!」と強く抵抗したと言います。何でも『少女A』の「A」が「AKINA」=自分のことと思ったというのです(詳しくは拙著『中森明菜の音楽1982―1991』―辰巳出版―を)。

対して『セカンド・ラブ』について、中森明菜は自著『本気だよ 菜の詩・17 歳』でこう語っているのです――「この曲をいただいたとき、私は感動で体じゅうに閃光が走ったような気がしました」。「閃光」という表現が、大げさで楽しいではないですか。

この曲を歌っている17歳の中森明菜が輝いて見えたのは、内なる閃光が声となって歌となって、日本中に放たれたから、なのかもしれません。

「週刊実話」8月14日号より

スージー鈴木

音楽評論家。1966年(昭和41年)、大阪府東大阪市出身。『9の音粋』(BAYFM)月曜パーソナリティーを務めるほか、『桑田佳祐論』(新潮新書)、『大人のブルーハーツ』(廣済堂出版)、『沢田研二の音楽を聴く1980―1985』(講談社)など著書多数。