「入国の目的は?」トランプ政権下の移民排除主義を反映させた『入国審査』はコワ面白い衝撃作

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【やくみつるのシネマ  小言主義 第282回】『入国審査』
アメリカでの生活に憧れていたスペイン人のエレナとディエゴ。グリーンカードの抽選で移民ビザに当選した2人は、ニューヨークへと降り立ち、新天地で暮らす準備は万全だったはずが、入国審査でパスポートを確認した職員によって別室に連行され密室での不可解な尋問が始まる。
状況がつかめずにいる2人だったが、職員から入国の目的などを問いただされ、ある質問をきっかけにエレナはディエゴに疑念を抱き始める。

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移住のための「入国検査」だけに絞った着想は面白い

海外に渡航した誰もが少なからずドキドキする「入国審査」。目的は? 滞在期間は? などの定型の質問に答えるあの「関門」で、自分も何の心当たりもないまま別室に呼ばれた経験があります。

あれは確か10年くらい前。トランジット目的でアメリカに入国しようとしたときでした。

夫婦2人で根掘り葉掘り聞かれ「世の中、あんなに怖いところはない」ということを知っているので、本作の試写のハガキが来たときは、2人でまだ見てもいないのに震え上がりました。

いつも一緒に見に行くかみさんは、「絶対、夢に出るから怖くて見られない」と拒否ったくらいです。

まぁ、大概の方は密室に呼ばれるなんてことはないとは思うのですが、第2次トランプ政権下のアメリカで、移民の強制送還や不当な逮捕が続いている昨今、いつ自分の身に降りかかるかもしれないという恐怖は覚えると思います。

そういう意味で、移住のための「入国検査」だけに絞った着想は面白い。77分という尺からも、長めの短編映画を見る気持ちでいいと思います。

この映画は、事実婚カップルがグリーンカードの抽選で移民ビザに当選。憧れのアメリカでの新生活を夢見て入国寸前に別室に呼ばれ、尋問を受けます。

自分の話ばかりでなんですが、呼ばれる理由も何も分からないんです。向かい合った審査官が見つめているのは1台のパソコン。一体どんな情報が入っているのか、こちらは全く分からないから怖いんですよ。