シニアを狙う“カルチャー詐欺”にご用心! 俳句や写真、社交ダンスに熱心な富裕層がターゲットに

資産の下調べをしてアプローチ

吉田さんが出品した展示会には他にも20名ほどの素人カメラマンの作品が展示されていたが、声をかけられたのは吉田さんだけだったという。

「今思えば、私の写真は海外で撮ったものばかりだったんです。6カ国分くらいあったかな? それで金を持っていると思われたんじゃないですかね」

一方、社交ダンスの講師を務める山下百合江さん(仮名・68歳)は「写真集の上梓とDVDのリリース」を持ち掛けられたという。

「ダンス専門誌の出版社を名乗る方から連絡をもらいました。私のことは社交ダンスのシニア競技会で『見初めた』そうです(笑)。競技会のパンフレットには出場者のプロフィールが載っていますので、そこから個人情報を入手したみたいですね。
『過去の写真なども集めて、ダンサー人生の集大成にしましょう』とか『社交ダンスを学ぶ次世代ダンサーたちのための教材として映像を残しませんか?』なんて、そそのかされました。
デジカメがなかった時代の写真もキレイな画像データにしてくれましたし、レッスンや発表会の撮影にも来てくれたので信用してしまったんです。
写真集とDVDの費用は併せて340万円でした。販売後の売り上げに関しても取り分を決めて契約書を交わしましたけど『諸般の都合で製作が遅れています』という連絡をもらってそれっきりです」

ちなみに、山下さんは自宅で社交ダンスを教えているのだが、その自宅は車が10台以上は楽に停められる広大な敷地に、1階にレッスン場を兼ねたパーティ用の広間がある豪邸。資産家であることを知った上でのアプローチだったと思われる。

幸い2人とも経済的にゆとりがあるため「老後資金がなくなった」「虎の子を奪われた」などの被害者に比べれば金銭的なダメージは少ないかもしれないが、人生の晩年を迎えて詐欺被害にあったという事実は、死ぬまで心に傷として残りそうである。

取材・文/清水芽々

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清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。