国民負担率上昇は高齢者の責任なのか? 選挙へ行かない若年層は「実質的に増税を容認している」

「5割も持っていかれる」という怒りは高齢者に向けるべきではない

それでは、この消費税率の引き上げは本当に必要なものだったのか。

財務省の「国の財務書類」によると、2010年度の連結ベースの国の純債務は402兆円だった。

そこから通貨発行益(日銀の国債保有)を差し引くと、国は325兆円の債務超過となっていた。

しかし、2020年度の債務超過はわずか8兆円と、ほとんど債務超過がなくなっている。

つまり、消費税の倍増によって得られた税収増は、その多くが猛烈なスピードで進められた国の債務圧縮に向けられたのであり、高齢者の社会保障を拡大したからではないのだ。

私は、国の債務超過が爆発的に拡大していくことが、望ましいとは考えていない。

だが、無理に減らしていく必要はないと考えている。

もし、2010年度の債務超過を同額で放置する決断をしていれば、消費税率の引き上げは必要なかったことになる。

当然、そうなれば国民負担率も、ほとんど上がらなかったはずだ。

国民負担率が上昇した最大の理由は、国民が財政の仕組みを勉強しようとせず、財務省の唱える財政破綻論にまんまと騙されて増税を容認したことだと思う。

その責任は若者にもある。若者は「自分は増税を容認などしていない」と思うかもしれない。

だが、選挙のたびに消費税増税を進めてきた自民党や公明党、立憲民主党を支持した人たちは、実質的に増税を容認したことになる。

消費税減税を主張した政党は、当時、いくつも存在していたからだ。

さらに若者の責任が重いのは、選挙に行かなかった割合が高いということだ。

「自分たちは5割も持っていかれる」という怒りを向けるべき先は、高齢者ではない。

これまで必要のない増税を繰り返してきた財務省であることに、早く気づくべきだろう。

森永卓郎 最後の提言』(小社刊)より