日本屈指のボロ競輪場で一攫千金の夢を見る「約10年ぶりの伊東競輪は、ほとんど変わっていなかった――」

「バカヤロー、やる気ねえなら帰れ!」

約10年ぶりの伊東競輪は、ほとんど変わっていなかった。

21年に民間の運営会社が施設を買い取って改修したと聞いていたが、旧スタンドはほぼそのまま。ボロ売店が清潔に改装されて立食い風の「伊東温泉横丁」と名付けられた程度。

今も競輪世捨て人の聖地は健在…と思ったら、場内の張り紙に7月から旧スタンドは改修のため閉鎖と。ついにスタンド建て替えが始まるようだ。

伊東温泉競輪 (C)週刊実話Web
筆者が好きな「日本三大ボロ競輪場」といえば、京都向日町、奈良、そして伊東。その中で向日町競輪場は昨年9月から本場開催が長期休止、施設全面改修と告知されたものの、もしかするとバンク解体後そのまま廃止かもと噂される。

今、絶滅の危機にあるボロ競輪場。今回、当地の陋屋めいた佇まいを目に焼きつけられて本当に良かった…などと言うから伊東の競輪神に疎んじられるのだが。

ナイター開催とはいえ1R直後に着いたのでまだ日は高く、2Rを見(ケン)して3Rから勝負開始。小回りの333メートルバンクは先行選手有利だが、微妙に直線が長いので差し、捲りもあり得る。
伊東温泉競輪 (C)週刊実話Web
その紛れから高配当を狙うのが穴党車券だが、1、2Rとも人気サイドで決着。嫌な予感がした3Rも2連単、3連単とも1番人気。続く4Rも本命決着で3連単で配当が400円台じゃやってられん。

日が傾いてきた5RのA級特選は穴が狙える番組で燃えたが、結果は人気ラインの2番手がちぎれて単騎がはまり、2連単1700円、3連単1万7700円と穴に。

でも、買える車券じゃないのよ。そもそも実力上位の先行ライン番手がなぜちぎれるのか。ガラガラのスタンドからは「バカヤロー、やる気ねえなら帰れ!」とものすごい怒号が飛んだ。

ただし、冷静に考えれば全員無条件に準決勝へ進む特選レースなのだ。

実力選手でも翌日に脚を残しておこうと考えても変じゃない。そのあたりが勝ち上がりと関係ない特選や負け戦の予想の難しさだ。とはいってもこの結果には怒る客も多かろう。

6Rも2連単5550円、3連単8410円と大荒れ。そして7Rは2連単310円、3連単430円と本命サイドに逆戻り。8Rも一番人気で決着で、穴を狙った車券はすべてハズレ。

こりゃ自分には向いてない傾向だと判断し、勝負を諦めて夜の街へ。競輪場から伊東市街は歩いて約30分。ダラダラ坂の両側には高級旅館が並ぶが、自分には縁のない世界。アー、若い愛人と泊まりたかったなぁ。

「週刊実話 ザ・タブー」8月8日号より

漢(オヤジ)の旅 静岡県伊東市編(2)】へ続く