堤真一×山田裕貴で伝説の舞台を映画化 『木の上の軍隊』は息が詰まるような緊迫感が味わえる

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【やくみつるのシネマ  小言主義 第281回】『⽊の上の軍隊』
太平洋戦争末期の1945年の沖縄・伊江島。日本軍は侵攻する米軍の猛攻撃によって壊滅的な状況に陥っていた。
宮崎から派兵された山下一雄少尉(堤真一)と沖縄出身の新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は、敵の激しい銃撃から逃れて、森の中にそびえ立つ巨大なガジュマルの木の上へ登って身を潜め、援軍が来るまで木の上で生き抜こうとする。
だが、山下と安慶名は、そのまま終戦を知らずに2年間も潜伏生活を送り、やがて極限状態に陥っていき…。

凄惨を極めた沖縄戦で起きた実話

2013年、劇作家の井上ひさしさんが遺した着想をもとに作られた舞台『木の上の軍隊』が初演されたそうです。

凄惨を極めた沖縄戦の縮図ともいわれる伊江島で、「生き抜く」をテーマにした伝説の舞台を映画化したのが本作。自分はこの舞台のことはもちろん、沖縄県伊江島で終戦を知らないまま2年間も樹上で生き延びた2人の日本兵がいた事実も知りませんでした。

残留日本兵では、グアム島の横井庄一さん、ルバング島の小野田寛郎さんは有名ですが、伊江島の話はもしかしたら大きく報道されなかったのかもしれません。

映画では、沖縄出身の監督の下、オール沖縄ロケを敢行。舞台では想像するほかなかったディテールを、妥協のない映像化により再現しています。

何しろ2人が潜む樹上のシーンのために、ガジュマルの大樹を数カ月かけて伊江島の公園に植樹したのだとか。

そして、いかにして壊滅的な戦いへと追い込まれていったのか、2人きりになってしまった状況もしっかり描かれています。