参政党躍進は『鬼滅の刃』が立役者? ポップカルチャーとナショナリズムの接続点

『鬼滅の刃』単行本 (C)週刊実話Web
2020年に公開された『鬼滅の刃 無限列車編』が空前の大ヒットを記録した時、それが数年後、日本の政治の風景に影響を与えると想像した者はどれだけいただろうか。 

だが今、確かにその“火”は政治の言説にも灯っている。 それを象徴するのが、神谷宗幣氏率いる参政党である。

神谷氏は2023年2月、自身のInstagramでこう投稿した。 

《今日は鬼滅の刃の話もしました。みんなで日本人の心を取り戻す鬼殺隊をつくりましょう》 

単なるイチ政治家がアニメ好きを表明しただけのようにも見えるが、実はこの“鬼殺隊”という言葉の引用には、参政党が掲げる思想──「日本人ファースト」的なナショナリズムの情動装置として、アニメを読み替える戦略が透けて見える。 

神谷氏は演説でも、『鬼滅』の人気キャラクター・煉獄杏寿郎のセリフを熱く語っている。 

「力のある者は、その力を他人のために使うんですよ。煉獄さんが鬼に誘われた時、お母さんの言葉を思い出して踏みとどまる。あの気持ちを、今の日本人が忘れてはいけないんです」 

アニメのセリフを政治の演説で引用する行為は、かつてなら軽んじられたかもしれない。 

しかしSNS時代の今、それはむしろ共通言語として多くの聴衆に届く。 

煉獄杏寿郎というキャラクターがもつ自己犠牲や他者への思いやりといった価値観は、参政党の掲げる「日本の道徳的再生」「家族の絆」「伝統の回復」といった文言と不気味なほど調和する。