スタート・ザ・クロックス──Oasis再結成とロックが一周した時代

「時計は止まったが、時間は進んでいる」 

これは過去への回帰ではなく、世界的な時間の構造が一周して戻ってきたという現象なのに、「懐かしいから嬉しい」という反応で止まってしまっている。

つまり、世界では時計が一周して動き出したが、日本では“時計そのものが止まったまま”という皮肉な状態にある。

重要なのは、今ロックが甦っているとしても、それは「かつてのロックのまま」ではないという点だ。

ヒップホップや電子音楽とのハイブリッド、DIY的精神の再解釈、SNSとの共生的拡散。

「音としてのロック」ではなく、「態度・価値観としてのロック」が再評価されている。

そこにOasisの再結成が重なることは、「ストップ・ザ・クロック」というベスト盤のタイトルが示唆するように、「止まっていた時間が、また動き出す瞬間」を意味している。

Oasisの再結成を単なる「昔好きだったから」という理由で歓迎している人は、世界の音楽的時間軸の転回に気づいていない。

もしかするとそれは、1周遅れの反応でしかないかもしれない。いま求められているのは、ロック的な形式ではなく、ロック的な態度だ。

そしてそれは“時間が動き出した”ことに気づいている者だけが手にすることができる視点である。

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