スタート・ザ・クロックス──Oasis再結成とロックが一周した時代

2010~20年代「ロックの死」とヒップホップの覇権 

2010年代は、グローバルに見れば「ロックがもっとも死んでいた時代」だった。 

Spotifyのランキング、フェスのヘッドライナー、SNSのトレンド。すべてにおいてヒップホップが主役であり、ロックはノスタルジーの壁に飾られたジャンルにすぎなかった。 

そしてロック自体も変化していた。リズムが太くなり、ヒップホップ的なビート構造を取り入れたロックが主流になり、ジャンルの境界は曖昧になっていった。日本でもKing Gnuとmillennium parade、Tempalayのようなアクトが「ロックとも言えるしヒップホップ的でもある」サウンドを鳴らし始めた。 

だが、2020年代半ばの今、世界的に「ロックの価値」が再評価されている兆候がある。 

Z世代にとってロックは「逆に新しい」 

オリヴィア・ロドリゴ、スティーヴ・レイシーなど、ポップ×ロックの境界が再び熱を持ち始めた。また、南米や東アジアでもバンドシーンが局所的に活性化している。 

これは単なる懐古主義ではなく、ロックが「一周して新鮮」になったのだ。ファッションで言えばY2K、音楽で言えば、グランジやブリットポップがカッコいいという美意識の転回が、世界的な嗜好として現れ始めた。 

ここで問題なのは日本のポップシーンだろう。 

世界が一周してロックに戻りつつあるこの時代に、日本のリスナーは果たしてそれに気づいているだろうか? 

いや、むしろ多くは時間軸の再帰性に無自覚なまま、Oasis再結成を喜んでいるはずだ。