生活保護申請の非情な実態 身体が不自由な70代男性に「働く気がないのでは?」

AIで生成したイメージ
先日、熊本県において「同居する孫のアルバイト代が増えたことにより生活保護が打ち切られた」老夫婦の話題がSNS上で物議を醸した。

夫婦と孫は「世帯分離」をしており、孫の収入は本来世帯収入とは見なされないことや、孫のアルバイト代は学費に充てるものであったことなどが行政に対する批判や非難に繋がったと思われる。

生活保護案件の取り扱いについては、たびたび行政の非情な対応が問題視されているが、その実態がどのようなものか? 実例を挙げて検証してみたい。

ケース1 佐藤信二さん(仮名・70代)

「私は建設関係の会社で65歳まで働き、その後は日雇いの仕事をして来ましたが、腰と膝を痛めて杖が手離せない状態になり仕事を辞めました。
妻も70歳までは工場で働いていましたが、人間関係が原因で精神を病んでしまったので辞めました。

しばらくは蓄えを切り崩して生活していましたが、退職金も年金も微々たるものなので数年で底を尽きました。
子ども達もそれぞれギリギリの生活をしているので頼るわけに行かないと思い、恥を忍んで生活保護の申請に行きました。担当者は最初から聞く耳を持たないといった態度でした。

『働けないのではなく働く気がないのでは?』と蔑むような目で見られ、『70歳を超えても男性なら工事現場にでも行けばいくらいでも仕事はありますし、女性ならいくつになっても風俗なら、需要があるみたいですよ』と信じられないようなことを言われました。
身体が不自由な私に工事現場で働けというのは虐待だと思いましたし、70年以上、まっとうに生きて来た妻に対して『風俗なら』なんて言い方をするのは侮辱でしかありません。
これが仮にも政令指定都市と呼ばれる自治体のやり方なのかと思うと絶望しかありませんでした」

その後、佐藤さんは事情を知った親戚の勧めで別の地方都市に移住し、夫婦でNPO法人が運営する福祉施設に入所したという。