生活保護申請の非情な実態 身体が不自由な70代男性に「働く気がないのでは?」

ケース2 田口康恵さん(仮名・19歳・医大生)

「両親が病気のため、相次いで他界しました。医療費もそれなりにかかりましたし、私の学費などもあって家にお金はなく、葬式代にも困るくらいでした。
生命保険金は下りましたが、1年間の学費に相当する分しかありませんでした。両親は共に一人っ子だったせいか親戚などもおらず、私は天涯孤独の身です。

生活のためにアルバイトはしていましたが、学業との両立が厳しくて身体を壊してしまいました。勉強だけはかろうじて続けていますが、生活は成り立ちません。
そこで生活保護の申請をしたところ、あっさり『学校を辞めて働きなさい』と言われました。

『死に物狂いで勉強して医大に入ったのに!?』と抗議しましたが『家庭や経済的な事情で学業を諦める人は珍しくない』とか『介護だったら、腐るほど求人はある』などと言われました。
私が言葉に詰まっていると『アナタはかわいい顔しているから●●あたりなら、稼げるんじゃないの?』と地元では有名な繁華街の名前も出されました。
遠回しに水商売か風俗に行けと言っているようなものです。

職業差別をするつもりはありませんし、生活のためなら贅沢は言えないということも理解できますが、病弱だった両親を助けたいと、小さい頃から頑張ってきた私の思いや努力をムダにしてしまうことはどうしてもできません。
長時間食い下がりましたが『医学部に入れてくれるような親元で育った恵まれた人間を助けるほど役所は甘くないです』と言われて窓口を閉められてしまいました」

追いつめられた田口さんは、大学を休学して働くことを検討しているそうだが、「外国人への生活保護支給率」の高さや「審査基準の甘さ」などを知り、自国民への対応の違いに対するその理不尽さと、行政そのものに不信感を抱いているという。

取材・文/清水芽々

【関連】20歳の娘にパパ活相手を紹介する母親 お金と欲望を共有する親子の実態 ほか

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。