「ホソミの国」とは何なのか? 元横浜ベイスターズ“ドラ1”細見和史が考える日本の伝統と哲学

人、モノ、自然、あらゆるものに敬意を持つ

細見和史
「野球って、礼に始まり礼に終わるじゃないですか。グラウンドに入るときに一礼することも、今ここでプレーできることに感謝する。
日本人が培ってきた素晴らしい伝統。そして哲学ですよね。そういうものが僕にとっては“国の礎”みたいなものなんです。
大事なものはなんなのか。人でありモノであり自然。あらゆるものに敬意を持つ。日本人にはそういう精神性が習慣として染みついている。
時代遅れと言われても、本当に大事なものは目に見えない。そういうことを理解する心を育んでいきたい」

いつだって、大事なものは目に見えない。ハマのホシの王子様は憂う。

この国はいつの間にか、効率と進化にばかり固執し過ぎて、本質を見誤ってしまうようになった。ホソミの国は、そんな現代へのカウンター的存在となる。

誠実であること。まっすぐであること。相手の背負うものに敬意を払い、自分の生き方を否定しないこと。

それは、細見が野球選手として全力で生き、挫折し、サラリーマンとして働き、迷い、ようやく辿りついた“人生の芯”である。

「僕はね、ようやく“戻ってこられた”って感じがするんです。野球に。いや、“生きている”ってことにかな。これはまだ途中の話ですけどね。
でも、人生って、勝ち負けじゃないんです。僕は勝負の世界で負けてきたけど、そこで学んだこと全部が、今の自分を支えてくれている」

あの日、プロ初勝利のマウンドで涙を流していた男が、今は泣かずに目指している未来。誰もが人生の優勝旗を手にするために「ホソミの国」は、動き始めている。

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」7月10日号より

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