自民党を38年ぶりに野に突き落とした“功労者”細川護熙政権と何だったのか?

新しい時代にふさわしいトップリーダーのおもむき

さて、それまで「55年体制」として長期政権を誇ってきた自民党を、38年ぶりに野に突き落とした“功労者”である細川政権は、なんとも華々しいスタートを切った。

まさに新しい時代にふさわしいトップリーダーのおもむきがあった。

細川は政策以前に、まず社会党出身の土井たか子を憲政史上初の女性衆院議長に就任させて、大いに世間の拍手を得た。

一方で、首相官邸の総理執務室の模様替えも行った。

壁を明るいベージュ系に張り替え、ソファを新調してそれまでの暗く重い官邸のイメージを一変させた。

さらに、歴代の首相はイスにすわったままでの記者会見だったが、欧米流を模倣したかのように、プロンプター(原稿映写機)を使って国民に立って語りかけるというスタイルを取り入れたのだった。

また、ボールペンで質問者を指名したり、公務以外ではわざわざ議員バッジをはずして、ことさら“普通の人”を演出したり、これらが功を奏して国民人気は沸き、政権誕生からしばらくは内閣支持率が80%を超えていた。まさに、絶好調の滑り出しであった。

しかし、一方で暗雲が漂い始めてくるのも、なんとも早かったのである。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」7月10日号より

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小林吉弥

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。