異次元だったはずの少子化対策はなぜ失敗したのか? 原因は「官僚バイアス」にアリ

三原じゅん子 (C)週刊実話Web
異次元の少子化対策が悪い意味で再注目されている。

今年5月、三原じゅん子・こども家庭相が『DayDay.』(日本テレビ系)に出演。これまでに累計65兆円もの予算が投じられながら成果がでていないこと、その検証を行っているのかと問われ、三原大臣は「これからしっかりそこを始めていって…」と説明した。

元「青汁王子」こと実業家の三崎優太氏が呆れた様子で、Xに《18年間で少子化対策に65兆円以上使っておきながら、効果の検証は『これから』らしい》《だったらそのお金、生活が苦しい人たちに直接還元したほうが意味あるんじゃない?》などと投稿した。

この指摘は、長らく続く少子化対策が改善どころか、悪化の一途をたどっていることを考えれば無理もない話。

ソーシャルメディアでも「原因の一つに経済的理由があるのだから、間違いなく今より改善できましたね」などの声が飛んでいるが、その腑抜けぶりを以前から批判していたのが、経済アナリストの故・森永卓郎氏だ。

『緊急出版 森永卓郎 絶体絶命の日本を救う最後の提言』(小社刊)収録の「亡国の少子化対策」(週刊実話2023年2月2日号掲載)では、“異次元”と呼ばれた少子化対策の見当違いぶりを指摘していた。(※肩書は当時のもの)

女子学生が考える「相手の希望年収」は500万円以上

2022年の出生数は初めて80万人を割り込む見通しで、少子化が一層深刻化している。

そのため、岸田文雄総理は年頭会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明した。

もともと岸田総理は「こども予算倍増」への道筋を「骨太の方針」で示すとしていたが、予定を繰り上げ、「こども政策」の強化策を4月までにまとめるよう指示していた。

具体的には出産育児一時金の50万円への増額のほか、児童手当や幼児教育・保育サービスの拡充、育児休業制度の強化などが見込まれている。

こうした政府の動きと歩調を合わせるように、東京都の小池百合子知事も1月4日、18歳までの子供に月額5000円の給付を所得制限なしで行う方針を表明した。

もちろん、少子化対策は必要なのだが、問題は検討されている出産・子育て対策がほとんど効果を持たないということだ。

国立社会保障・人口問題研究所が実施した「出生動向基本調査」によると、2020年時点の夫婦の完結出生児数は1.9だった。

つまり結婚さえすれば、いまでも2人近い子供ができているのだ。

ということは、非婚化によって深刻な少子化が発生していることになり、非婚化の加速は結婚しないのではなく、結婚できないことが原因だと考えられる。

私のゼミの女子学生に「相手の年収がいくらだったら結婚しますか?」と聞いたら、全員が500万円以上と答えた。

もちろん、これは希望ベースだが、労働政策研究・研修機構が2014年に発表した報告書で20代後半男性の結婚率を見ると、年収150〜199万円が14.7%であるのに対して、年収500〜599万円だと53.3%に跳ね上がる。

非正社員の平均年収は170万円だから、非正社員の男性はほとんど結婚してもらえない現実があるのだ。