石破政権の求心力が液状化 「前門のコメ、後門のトランプ関税」参院選を前に公明党も見放す事態

石破茂 (C)週刊実話Web
石破首相は夏の参院選を前に三つの難題を抱え込んだ。消費税減税とコメ価格の暴騰、トランプ米大統領との関税戦争だ。
江藤農相更迭で野党が勢いを増す中、対応を一つでも誤れば参院選で退場を迫られかねない。首相はいよいよ崖っぷちに追い込まれた――。(全2回中の1回) 

公明党が「消費税5%恒久化」を提案

首相に近い自民党の閣僚経験者によると、“トランプ関税”を巡っては、日本側には当初、首相と国家安全保障局が練った「ある秘策」があったという。

日本側は米国に対し、日本への追加関税24%に加え、自動車関税25%の撤廃などを要求しているが、双方の隔たりは大きい。

そこで首相は、6月15日からカナダで開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)の前日である14日に米ワシントンを訪問。

この日がトランプ氏の誕生日であることから、「バースデー会談」を行い、電撃決着を図るというシナリオだった。

しかし、米側の態度が依然として硬いため、このシナリオは白紙に戻し、上乗せ関税発動の猶予期限である7月9日までの合意を当面の目標として、交渉を進める方針に転換したという。

ただ、決裂による関税発動という事態も想定して、首相は世界貿易機関(WTO)筋のルートで韓国や欧州連合(EU)の関係者と接触を進めるよう指示した。

「発動された場合は米国を一斉提訴できないか、各国の意向を探っている。参院選を前に弱腰のままでいるわけにはいかない」(閣僚経験者)

しかし首相官邸内には早速、暗雲が立ちこめた。

5月18日の報道各社による世論調査の多くで、共同通信が前月比5ポイント減で過去最低の27%となるなど、内閣支持率がさらに下がったのだ。

加えて、森山裕幹事長が消費税維持に「政治生命を懸ける」と踏み込んでいるのに、公明党の斉藤鉄夫代表は、食料品に限定するとはいえ「5%への恒久減税」を打ち出し、石破首相と自民党執行部に衝撃を与えた。

そして、江藤拓農相の失言だ。

5月18日に佐賀市での講演で「私はコメを買ったことがない。支援者がくれるので、家には売るほどある」と発言。野党の猛反発をくらい、3日後に更迭され、後任に小泉進次郎氏を起用した。

「江藤は宴会で裸になるくらいしか芸のない男だった。このタイミングでの失態は大迷惑だ」

自民党ベテラン議員は手厳しい。

コメでは、3回目の備蓄米放出(4月23〜25日)も、実に97%をJA全農が落札し、首相の誤算と非力さが際立つ結果となった。