森永卓郎さんは“令和のコメ騒動”を予言していた? 2年前に「消費量を超えるコメを作り続ければよい」と警鐘

「生産者の立場に立たないと食料自給率は上がらない」

私は、まず農業を「食べられる」職業に変えるべきだと思う。例えばヨーロッパは農家の収入の9割が補助金、アメリカでも4割が補助金だ。日本は3割程度である。
農民1人あたり100万円の補助金を追加しても、必要な予算は1兆3600億円で、防衛費増額の4分の1強を回すだけでよい。その補助金だけで、都会での低賃金、低やりがい仕事に辟易としている若者が就農する大きな動機になるだろう。

もう一つ必要なことは、「自分の食べ物は自分で作る」という大原則を打ち立てることだ。この3年間の私の「一人社会実験」の経験によると、家族が食べる基本的な野菜は、1アール(30坪ほど)の畑があれば、冬場を除いて十分自給できる。

プロの農家は冬の時期や素人では栽培が難しい品種、あるいは田んぼが必要なコメを中心に生産すればよい。十分な所得補償があれば、たとえ野菜の自給が広がったとしても、農業生産額は大きく増えるに違いない。
政府が打ち出す食料安全保障策は、日常は農家を軽んじておいて、いざとなったら農産物を強制徴収して、それを都会にばらまくという都会目線の政策だ。もっと生産者の立場に立たないと、食料自給率は上がらないだろう。

(2023年6月8日号)
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緊急出版 森永卓郎 絶体絶命の日本を救う最後の提言
2025年4月25日(金)発売
価格1650円(税込)/電子書籍版1550円(税込)

森永卓郎

1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト。 1980年に東京大学経済学部を卒業後、 日本専売公社(現在のJT)に入社。経済企画庁、 UFJ総合研究所(現在の三菱UFJリサーチ&コンサルティング)などを経て、 2006年から獨協大学経済学部教授。 執筆のほか、テレビ、ラジオ、講演でも人気を博す。 2023年12月にステージ4のがん告知を受け、 闘病しながら活動を続けていたが、2025年1月28日死去。