森永卓郎さんは“令和のコメ騒動”を予言していた? 2年前に「消費量を超えるコメを作り続ければよい」と警鐘

「問題は政府が考える対策に実効性があるのかということ」

緊急出版 森永卓郎 絶体絶命の日本を救う最後の提言
5月11日の朝日新聞が「食料増産命令法整備を検討」と一面で伝えた。戦争やパンデミックなど有事の際の食料不足に備えて、花農家にコメやイモを作るよう命令したり、限られた食料がまんべんなく消費者に行きわたるように価格統制や配給制を導入することも視野に入れているという。
食料安全保障について、政府が本気で考え始めたことは評価できる。食料自給率は、アメリカ121%、イギリス70%、ドイツ84%、フランス131%であるのに対し、日本は38%と最低水準だ。もし、このまま戦争に巻き込まれた場合、日本人は闘う前に飢え死にしてしまう。

問題は、政府が考えるこの対策に実効性があるのかということだ。例えば有事になったら、花農家がすぐにコメを作れるようになるのか。コメを作るためには水田が必要だ。普通に考えれば、区画を整備し、粘土質の土に入れ替え、農業用水を確保して、初めてコメが作れるようになる。
コメが収穫できるまで、数年の時間が必要になるだろう。また、そもそも耕作面積が大きく減っているので、国民全体の胃袋を満たすだけのコメを収穫することは、とてもできない。

イモを作ればよいという考え方もある。しかし、イモにしても、肥料を入れて芽欠をして、土寄せをしてと、収穫のためにはそれなりの技術が要るし、連作障害が出るので、毎年は生産ができない。さらに種イモの確保が必要になるから、そう簡単に増産などできないのだ。

私は「有事になったら食料を生産する」という考え方が、そもそも間違っているのだと思う。食料安全保障のためには、普段から国民が食べるのに十分な量を作っておくべきなのだ。
余った食料は輸出するか、家畜に与える。それが、欧米の実践している食料安全保障策である。日本も輸出したり、家畜のエサにしたり、あるいはパンの原材料として使うことを前提に、普段の消費量を超えるコメを作り続ければよい。
しかし、そうは言っても日本の農業就業人口は、すでに136万人にまで減少している。現実には、食料生産をしてくれる農家がいなくなっているのだ。