石破首相、6月訪米へ “トランプ関税ショック”が対米交渉の追い風に

石破茂 (C)週刊実話Web
トランプ米大統領が世界中に衝撃を与える相互関税を発動し、日本は国難とも呼ばれる事態となった。石破首相はここを乗り切れば夏の参院選へのアピールになるが、対米交渉に行き詰まれば石破政権はいよいよ窮地に陥る。首相は最大の正念場を迎えた――(全3回中の1回)

トランプ大統領を「ラスボス」と位置付け

「私が訪米し大統領と直接話し合う。状況を一気に転換させる」

石破茂首相は4月3日夜、同じ鳥取選出で最側近の赤沢亮正経済再生相に電話を掛け、胸の内をこう明かした。

赤沢氏は「必ず首脳会談につなげる。私に交渉担当をやらせてほしい」と自身を売り込んだ。

トランプ氏がこの日未明、相互関税と称して日本への24%を含む各国への関税の大幅引き上げを表明し、同日の日経平均株価は1000円近く急落するなど、日本経済が激震に見舞われた。

それだけに、政権が受けるダメージは相当なもののはずだが、政権中枢の受け止め方は違った。

「首相は気力が戻ってきた。対米交渉を成功させれば、追い風になる。経済対策も堂々と打てるので参院選に向けて弾みになる。政権幹部はみな同じ考えだ」(官邸詰めの政府関係者)

永田町では首相の指導力について、少数与党で政権基盤も脆弱であるのに加え、自身の商品券配布問題などにより大いに疑問符が付けられ、参院選後の首相交代が与野党を問わず「ほぼコンセンサス」(自民党関係者)になっていた。

しかし、今回の「トランプ関税ショック」(同)に、首相は起死回生の機会到来を直感し、冒頭の発言になったというわけだ。

実際、その後の首相の動きは早かった。森山裕自民党幹事長の進言を受ける形で、4日に与野党7党の党首会談を国会で開催した。

「この事態は国難であり、トランプ氏を共通の『ラスボス』と位置付けることに成功した」(同)

「G7サミットに合わせて訪米するつもりだ」

さらには、6日が日曜日なのにもかかわらず、公邸に林芳正官房長官や赤沢氏、加藤勝信財務相に加えて、財務、外務、経済産業各省などの高官を集めて緊急の対策会議を実施。7日夜のトランプ氏との電話会談につなげ、世界各国の中で日本が対米交渉の先頭に立つことができた。

「首相は事務次官級の三村淳財務官と赤堀毅外務審議官を直ちに訪米させて米側と予備協議をさせた。自身は早ければ5月中、恐らく6月中旬のカナダでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)に合わせて訪米するつもりだ」(政府関係者)

石破首相は国内向けにも余念がない。

連立パートナーで長年の盟友でもある斉藤鉄夫公明党代表や、森山氏らと相次いで会談。経済対策の段取りや規模について意見を擦り合わせた。

政府関係者によると、公明党から再三要望があった定額給付金は、首相の強い意向で見送る一方、6月中に経済対策を示す考えで一致した。

事業規模は「新型コロナ対策でまとめた第1次と第2次の経済対策計55兆円の半分ほど」(同)となる25~30兆円が取り沙汰されているという。

また、政権中枢が画策しているのは、これだけではない。先の自民党関係者によると、斉藤氏と3月25日に昼食を交えて会談した際に「経済対策は国民民主党を巻き込んで取りまとめを目指す方針を確認した」という。

「週刊実話」5月8・15日号より

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(4月27日18時公開)