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侍ジャパン瓦解…ソフトバンク&楽天が「東京五輪」ボイコットへ

侍ジャパン瓦解…ソフトバンク&楽天が「東京五輪」ボイコットへ
(画像)Alex Kravtsov / shutterstock

ソフトバンクの孫正義会長、楽天の三木谷浩史会長が相次いで東京オリンピックの開催に反対を表明。トップの衝撃の発言により、両球団はパのダブルエース田中将大と則本昂大、主砲の柳田悠岐、浅村栄斗らの五輪派遣見直しが進められている。「侍ジャパン」が瓦解の危機に――!!

野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督は、6月初旬に選出する予定になっている五輪代表24人を選考するため、精力的に各球団の視察を続けている。しかし、ここへきて抜本的な見直しを迫られることになりそうだ。

「パの2強、ソフトバンクと楽天のオーナーが、新型コロナの世界的流行の最中に東京五輪を開催することに反対を表明し、トップの発言を忖度した球団が選手を派遣しない方針に転じたからです。孫会長はアメリカCNBCのインタビューに、『日本だけでなく、多くの国々がオリンピック開催を非常に恐れている。(中略)アスリートの派遣をどのようにサポートできるのか分からない」と述べ、開催する日本と代表選手を送る国々の双方に懸念を示しました。三木谷会長もアメリカCNNとのインタビューで『日本はワクチン接種が非常に遅れているだけに、世界中から人が集まる国際的なイベントを開催するのは危険、リスクが大き過ぎる』と、暗に自殺行為と強く批判。影響力の大きな2人の五輪中止要求は、各方面に波紋を投げかけています」(大手紙社会部記者)

開催まで2カ月を切っても、国内主要メディアの世論調査で6割が中止、延期を含めた8割超が今夏の開催に反対している。ところが、国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長が「五輪期間中に日本で緊急事態宣言が出されていても大会は開催する」と、開催への強い意欲を示し、トーマス・バッハIOC会長も「五輪の夢を実現するために誰もがいくらかの犠牲を払わないといけない」と強行開催の姿勢を崩さない。

高額選手の契約額に見合う補償がない

孫、三木谷両会長が五輪開催、選手派遣に反発する背景には、「五輪派遣中に選手がコロナに伴うアクシデントに見舞われた場合、IOCおよび大会組織委員会から補償が約束されていないことにある」と、スポーツ紙デスクは明かす。

「ソフトバンクは、柳田悠岐外野手の6億2000万円、森唯斗投手4億6000万円など高給選手が多く、チームの年俸総額は12球団随一の60億円超(金額は推定)。楽天も球界歴代最高9億円の田中将大投手、5億円の浅村栄斗内野手など高年俸選手がゴロゴロいる。危険な要素がてんこ盛りなのに、五輪期間中にアクシデントが起きても契約額に見合う補償がない。メジャーリーグが五輪に選手を派遣しないのも、これが理由。『日本の金メダル獲得のために選手派遣を』と言われても、球団側が応じられない事情はそこにある」

困り果てているのは、稲葉監督だ。今年3月9日に1次候補185名を提出し(選手名は不公表)、この中から24人に絞り込む。優勝した2019年の国際大会「プレミア12」のメンバーをベースに選考する方針で、基軸を成すのは実力が上回るパ・リーグ。なのに、楽天とソフトバンク抜きでは計算が立たないのだ。

「ソフトバンクには、主砲の柳田、現在故障中の森のほか、エース千賀滉大、〝キャノン〟甲斐拓也、昨季盗塁王の周東佑京らがいる。楽天にも、エース田中をはじめ、主砲の浅村、国際経験豊富な則本昂大、守護神の松井裕樹、ルーキーながらはや6勝を挙げた早川隆久…。これら〝有力な駒〟不在では、金メダルは夢」(同)

日本野球機構(NPB)は苦肉の策として、従来の代表メンバー選考の方針を改め、「1球団2選手案」を各球団に示している。これまではサッカー同様、1球団から何人でも選べたが、球団のリスクを平等にするため1球団2選手で24人選考にしようというのだ。

東京五輪中止決定が球界のベストシナリオ

しかし、孫氏や三木谷氏が求めているのは、リスクの平等な分担ではなく、危険な五輪の開催中止にある。球団サイドからすれば、稲葉監督に2人を指名されても、逆に対応に苦慮するばかりで応じ難いという。

「パの2強が派遣しない場合、頼みの綱は巨人の菅野智之、中日の大野雄大というセのダブルエースですが、ともに調子を崩し戦線を行ったり来たり。一方、阪神の若き4番、佐藤輝明に期待がかかるが、なにせルーキー。経験不足は否めない。侍ジャパン瓦解の危機です」(侍ジャパン担当記者)

もっとも、日本経済に大きな影響力を持つ孫、三木谷両氏は、東京五輪の中止を願った上での発言であり、政府に決断を促すのが目的だ。メディアに「ソフトバンクと楽天が五輪ボイコット」と報じられることで、中止をためらう政府に踏ん切りをつけさせようとしているのだ。

「早期に中止が決まれば、五輪期間のプロ野球の中断日(7月19日〜8月12日)に延期された日程などを組み込むことができる。これが球界にとってベストシナリオでしょう」(セ・リーグの球団首脳)

菊池涼介、鈴木誠也など選手、コーチら計12人がコロナに集団感染した広島でも試合の中止が続いていることから、ソフトバンク、楽天に同調して侍ジャパンへの選手派遣をボイコットする動きが高まっているという。稲葉監督の決断に注目が集まる。
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