地下鉄サリン事件から30年、“オウム史跡”をたどる ラーメン店「うまかろう安かろう亭」があった錦糸町の現在

麻原彰晃
1995年3月20日にオウム真理教が引き起こした化学テロ・地下鉄サリン事件から、ちょうど30年を迎える。

公安調査庁は今年2月、一連の事件の風化を防ぐ「オウム真理教問題デジタルアーカイブ」を公開した。

オウム真理教は言わずと知れたカルト宗教であり、宗教団体として活動するその実、サリン散布をはじめとする殺人もいとわなかった。しかし一方で、殺人を行う団体とは思えないような、ユニークな布教活動も有名だ。

公安調査庁のデジタルアーカイブで、この活動が確認できる。教団の足跡や事件概要が集積され、凶悪事件のみならず、資金獲得のために行なっていた事業もまとめている。

デジタルアーカイブの「資料館」「収益事業」を見ると、オウムが経営していた飲食店「オウムのお弁当やさん」「うまかろう安かろう亭」、PCショップ「マハーポーシャ」の3店が確認できる。
公安調査庁 オウム真理教問題デジタルアーカイブより
もちろん、これらはすでに閉店している。しかし、店舗のあった土地自体は、当たり前だが、今なお存在し続けている。地下鉄サリン事件から30年が経った今、その跡地はいったいどうなっているのか。“オウム史跡”をたどる。 

現在は平穏な店がズラリ 今なお風評被害をバラ撒くオウム真理教 

オウム真理教は1990年の衆議院総選挙に『真理党』として候補者を擁立し、教祖・麻原彰晃は渋谷・中野・杉並を地盤とする旧東京4区から出馬。それゆえか、教団の関連施設もこれらの区内に多く、「うまかろう安かろう亭」も阿佐ヶ谷・杉並・中野などに店舗展開していた。 

東京の地下鉄に貼られているポスター
東京では総武線エリアにも関連施設が多く、93年には教団が炭疽菌を噴霧した「亀戸異臭事件」を起こしたほか、「うまかろう安かろう亭」も数多く出店。そのひとつが、総武線・錦糸町駅近くだ。

駅から7分ほど歩いた都営バスのバス停付近は、東京スカイツリーに続く一本道が映えスポットとして有名なほか、人気アイドルを多く輩出した高校が存在する。

「うまかろう安かろう亭」錦糸町店はこの近辺に店を構えたが、現在は教団と全く無関係な店舗が多く軒を連ねており、平和な街だ。
バス停を降りてすぐの場所に「うまかろう安かろう亭」があった
しかし、オウムが与えた社会的影響は、過去のものではない。今もこうして、その土地に風評被害をもたらしている。

周辺住民に話を聞くと、今なおオウムの影響や困惑の声が伺えた。

「コロナ後に引っ越してきたので、この辺りのことは知りませんでした。今この辺に連なっているお店は事件と何も関係ないのに、オウムが店をやっていたってだけで風評被害が生まれて可哀想です」(近隣在住の30代男性)

総武線のオウム史跡はまだまだ存在する。錦糸町から3駅、当時は電子部品の街として知られた秋葉原だ。ここには、さらに驚きの光景が広がっていた。

取材・文/シンディー・カート

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