「死ぬまでに代表曲を作りたい、『上を向いて歩こう』みたいな…」プロ野球応援の革命児がたどり着いた“悟りと希望”



「応援のプロ」の肩書を封印

ジンは応援のプロを名乗ることをやめた。

小学生の頃、目立つのが好きで、何かを表現するのが好きだった少年は30年にわたるプロ野球応援団での激闘の時間を経て、ようやく“死ぬまでにやるべきこと”という本懐を見つけた。

「応援は好きです。知らない人たちが、同じ歌を歌い、球場が一体となったときのあの雰囲気は最高です。だけど、かつての伝説的な応援団長みたいな『死ぬまで一つのチームを応援する』というスタンスとは違うのかな。オレはやっぱり、自分の作った曲で多くの人が喜んでくれて、みんなで歌える曲を作るのが好きなんですよ。だから、死ぬまでに代表曲を作りたいんです。多くの人、それこそ国民全員が歌える『上を向いて歩こう』みたいなね。あとは、子供の成長が何よりの楽しみですね。娘がライトスタンドで応援団をやりたいと言ったら? うーん…考えたくないですね」

ジンはそう言ってかぶりを振った。

2歳の娘は野球が好きで、ダンスも、歌も好きだという。

もしも数年後、父のラッパに興味を持った娘に「応援団になりたい」と言われたら、ジンはきっと「好きなことをやれ」と言うだろう。

30年前、大好きだった父親がそう言ってくれたように。

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」4月3日号より