「好きな人は何があっても買う」愛好家をひきつけてやまない“南米音楽の深み”を稀代の専門店オーナーが熱弁!



大洋レコードは幸運のクジラか

神楽坂の『大洋レコード』
例えば無名アーティストのツアーを手がけたら人気のフェスに呼ばれたり、自分が日本語詞をつけた曲が向こうの朝ドラの主題歌に抜擢されたり。ビッグオーシャン。大洋レコードという名は世界へ通ずる幸運のクジラか。

「ビジネス的というよりも、モチベーション的な部分ですね。そのおかげで続けていこうと思える。まぁ、好きな音楽と野球、奥さんと子供2人の家族にも囲まれて、今は幸せですよ」

2005年に神楽坂の雑居ビルの一室にオープンした大洋レコードは、今年で20周年を迎える。

独立当初はなんの勝算もなく、南米音楽への情熱と自身に対する会社の不遇、愛のなさを呪って、飛び出して始まった。

それが神楽坂の町内だけで4回の引越しを経て、20年もの間、多くの南米音楽ファンに愛されながら続けてこれたのは、ひとえに伊藤の南米音楽に対する愛情の深さゆえ。そして、その世界を知るために、あらゆる角度から楽しみ、極めんとする心ゆえであろう。

「今の店は22年に購入した築50年の古民家の一階部分をリノベーションしています。前の店はもっと販売スペースも大きくて全曲試聴ができたんですが、せっかくお店に来てくれるなら、ゆっくり楽しんでいってもらいたいと思って、前からやりたかった飲食スペースを作りました。コーヒーと軽食ぐらいのものだけど、それも音楽を知るためのこと。食と音楽はその国を知るためには切り離せないものですからね」

(完)

取材・文/村瀬秀信

「週刊実話」3月6・13日号より