融資審査に落ちた顧客を闇金に紹介! 紹介料を荒稼ぎしていた「悪徳信金マン」の手口



興信所に素行調査を依頼

だが、それで終わりではなかったという。

「結果的に債権を放棄せざるを得なかった闇金が嫌がらせをしてくるようになったんです。その矛先は叔父だけでなく、家族にも及びました。警察に行ってもとりあってもらえず、叔父は身の危険を感じた家族から切り捨てられるような形で離婚させられました。今は日雇いの仕事に就くようになりましたが、一時は廃人のようでした。私は優しくて働き者の叔父を尊敬していたので、叔父の人生を狂わせたAが許せませんでした」

Aの悪事を白日の下に晒そうと考えた小川さんは、証拠を集めるため、興信所にAの素行調査を依頼。その結果、同じような被害者が複数いることを知り、そのうちの1人にコンタクトをとったという。

「その人は30代の女性です。叔父と同じように事業資金の融資を申し込み、審査に落ちた後Aに声をかけられたようです。叔父の時と違うのは、紹介されたノンバンクが闇金ではなく風俗だったこと。女性はいつの間にか風俗業者に売られていたんです。騙されたことを知った女性は訴えようとしたようですが、相手は反社団体。『報復が怖くて言いなりになるしかなかった』と言っていました。彼女は3年以上働いているそうですが、あと最低でも2年は働かないと返済が終わらないそうです。彼女の働いているお店には他にもAの毒牙にかけられた女性がいるとも聞きました。Aは金融マンどころか人間の風上にもおけない人間なんです」

Aの悪行を知った小川さんは怒りが収まらないが、その後、奇妙なことが起きたという。

Aが突如姿を消してしまったのだ。

「急に退職してしまったんです。家庭の事情ということでしたが、誰も詳しいことは知りませんでした。それどころか、上層部は不自然なくらいAのことに触れようとしないんです」

何やら隠蔽の匂いがする…とは言い過ぎだろうか。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。