「僕の人生はケチャップにまみれて潤いを得られたようなもの」ナポリタン学会会長が国民食の座を狙い奮闘中!



「認定店」決定方法はミシュランと同じ!

認定店の『スポーツカフェ ヤンキース』
ノブレス・オブ・リージュ。オブナポリタン。高い地位にある人ほど、進んで人のために動く。

それは成り行きでナポリタン学会の会長に選任された田中だけではない。

ナポリタンの御旗に集いし精鋭たちもまたその義務を果たすーー。

“認定店”。学会では主任研究員3名がそれぞれに食べ歩き、その情報を共有。年に数回の定例会で相応しい店を協議し、満場の一致を持って日本ナポリタン学会「認定店」が誕生する。

やっていることはミシュランと同じだ。

しかし、ここで疑問が湧く。ナポリタンなんて大概が美味いに決まっている。

認定店とされる店は何が違うのか。田中はナポリタンを啜る手を止めた。

「『ナポリタンなんて全部同じだ』、『デルモンテとカゴメの違いぐらいでしょう』なんて言う人が稀にいます。外から見れば、阪神・湯舟の晩年ぐらいストレートと変化球が同じ球筋のように見えますが、よく見ると全然違う。ナポリタンとはケチャップと麺であれば、あとはフリースタイル。自由演技です。麺は太いか細いか。否、ソフト麺やうどんだっていい。肉はベーコンかハムかウィンナーか。炒め油はラードかバターかオリーブオイルか。そうやって店によってこだわりが違う。故に、どれとして同じナポリタンはないのです。だから、認定店を選定するうえで、美味い・不味いなんて観点はあんまり関係ないのかもしれません。もっと広い視点が必要です。ナポリタンがいくらめちゃくちゃ美味くても、我々の趣旨に賛同してもらえること。要するに『どれだけナポリタンを大事にしているか』ということでしょうか」

“認定”されるならお店側も喜んで受けるだろうと思いきや、必ずしもそうでないのがナポリタンという人間の情念をケチャップで絡めた食の奥深さ。

洋食屋において、ナポリタンは必ずしも主役ではない。

一食ずつ炒める手間が掛かる分、美味しくとも店側が「めんどくさい」と難色を示す場合もあるし、学会で正史とする歴史や認定した店の姿勢に対して異議を唱える思想の違う人もいる。