豪胆な政治活動とは裏腹! 夫人や秘書もあきれるほど世事に疎かった三木武夫の「駄々っ子」逸話集



ズボンの膝は常にゴミだらけ

そのうちのいくつかを列記してみる。

「朝8時にハイヤーが、自宅の門前に来るよう予約してあった。しかし、三木は朝寝坊も手伝って、2時間でも3時間でも平気で車を待たせておいた。ために、三木家のハイヤー代が生活費を圧迫し、現金が底を突いて睦子夫人が実家に帰ってしまった。三木は車を待たせればカネがかかるということなど、まったく考える人ではなかった」

「安全カミソリで毎日ヒゲを剃るとき、いつも血だらけ傷だらけになっていた。要は手先が不器用なのだが、三木は『なぜ“安全”なのに傷だらけになるのか』と不思議がっていた」

「三木の好物は、殻付きの落花生とミカンだった。落花生を食べ始めると、殻といわず薄皮といわず落としまくる。片づけるということを知らない。ために、ズボンの膝あたりは、いつもゴミだらけになっていた。また、ミカンは放っておけば一度に10個、小粒のものなら20個でもペロリとやってしまう。むいた皮は放ったらかし、加えて口に入れた房は片っ端からぺーっとやるから、テーブルの上はいつも戦場の如し」

「夫人は三木に、部屋の掃除を絶対にさせないようにしていた。箒を持たすと、掃いたのか散らかしたのか分からなくなる。また、三木は意外と絵を描くのがうまかったが、部屋のそこら中に絵の具が飛び散り、着ているものもベタベタになるのが常だった。ために、絵を描くときは夫人がそばについて、いちいち筆を洗っては色を付け、また洗うことを繰り返していた」

この手のエピソードは、まだまだ尽きることがない。次のような話もある。

「チョッキのボタンは、段違いにかけることがしばしばだった。夫人が『パパが一番上のボタンを間違えたからよ』と言うと、三木は『一つしか違わなかったのに、なぜ全部違ってしまったのか』と嘆いていた」