「地方は宝の山!」全国600店以上を巡礼した食の旅人が語るローカルチェーンの味と歴史の奥深さ



『本店巡礼』を上梓

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このスープ、濃いのにとてもまろやかだ。本店は、他店とは何かが違うのではないか。

でも、そのことを店員さんに尋ねても「他の店とまったく同じです」と言われるばかり。

しかしながら、『本店はやっぱりうまい、と感じた気持ちは否定できない』と、“本店パワー”への興味はさらに上昇。おそらく他のチェーン店にも本店パワーはあるはずだ。

そんな仮説に基づき、ついに彼は日本全国のチェーン店の本店を訪ね歩くブログ『本店の旅』をスタートさせてしまう。

「熱はまだまだでしたが、11年にTBSラジオのライムスター宇多丸さんの番組に呼ばれて、『チェーン店の本店がうまいかもしれないよ』というぼんやりした話をしてきたんですね。そしたらそれを聞いていた大和書房の人から出版の話が来て、13年に『本店巡礼』という書籍を出しました。そこで全国チェーンの本店を行脚していくんですが、全国展開のチェーンって𠮷野家とかスシローぐらいで、実は数が少ない。持ち駒もどんどん減るし、本も出して満足していたときに、京都に転勤になったんです。ああ、これで東京も離れるし、終わりだなと。一度は覚悟しました」

京都に赴任した彼がそこで見たものは、未知なる地方の雄・ローカルチェーン店の可能性だった。

関西、東海、北陸、中国と、近隣にも宝の山が埋もれている。ああ、俺はチェーン店の何も分かっていなかった――。

思いを改めた彼のチェーン店行脚、第二章がここに始まった。

「そこからが本番というか、地元モードに変わってからが茨の道。全国チェーン探訪のときは、身近にあるチェーン店の1号店に行く特殊性を楽しむアプローチでしたが、ローカルチェーン店だと『1号店は違う』と言っても身近にない店だからピンとこない。これは真剣にやらないと通用しないなと、どんなローカルチェーン店がどこにあって、その歴史はどうなっているのかを徹底的に調べ上げるところから始めました」