「池には高価な錦鯉がゴマンと泳いでいる」壮麗&豪華絢爛報道に隠された田中角栄邸の“錦鯉異聞”



正確だった(?)口笛健康法

「われわれが集めた年賀状を政界、財界、官界、選挙区関係、その他の5つに分類し、束にして先生にお渡しするわけです。凄いのは、先生がその7000枚すべてに目を通されることです。返礼の賀状は秘書が代筆するが、先生は個々に『あれを書いておけ』と文面の指示をされる。7000枚に目を通すだけでも大仕事なのに、一枚一枚の賀状まで心配りするんだから、なんとも几帳面、人一倍の“努力の人”でもあったのでしょう。また、これだけの数の賀状が来るのも、皆さんがそのあたりに惹かれていたということではないか」

一方で、田中秘書軍団の一人から、こんな話を聞いたこともあった。

「先生は元気な頃から、じつは結構、自分の健康に気を使っていたんです。先生は時々、その日の体調を口笛を吹いて確認していた。口笛が調子よくヒューと鳴ると健康で、鳴りが悪いと必ずどこかが悪かったことから、先生は『かなり正確な健康診断なんだ』と得意げでした」

風邪気味になると、よく焼いた長ネギを首に巻いていた。

子供の頃、母親から勧められたらしく、一流の医師が周囲にいるにもかかわらず、角栄流健康法は意外と“クラシック”なものだったという話である。

(本文中敬称略/この項つづく)

「週刊実話」1月9・16日号より

小林吉弥(こばやし・きちや)

政治評論家。早稲田大学卒。半世紀を超える永田町取材歴を通じて、抜群の確度を誇る政局・選挙分析に定評がある。最近刊に『田中角栄名言集』(幻冬舎)、『戦後総理36人の採点表』(ビジネス社)などがある。