「池には高価な錦鯉がゴマンと泳いでいる」壮麗&豪華絢爛報道に隠された田中角栄邸の“錦鯉異聞”



最後まで面倒を見続ける人生観

かつて田中邸に「ヤジ」という名の大型犬がいた。娘の真紀子(元外相)が父を「オヤジ」と呼んでいたことがあり、その「オ」を抜いての彼女の命名であったが、田中はこの「ヤジ」を連れて、早朝に邸内での散歩を楽しんでいた。

ところが、この「ヤジ」がフィラリアという寄生虫が引き起こす病気にかかり、突然、苦しみだして近所の獣医を呼ぶことになった。

すると獣医が来るまでの小一時間、田中は犬舎にもぐり込み、大きな「ヤジ」に添い寝するような格好で体をさすり続けていたというのである。

先の「越山会」幹部は「ヤジ」の一件について、こう付け加えたのだった。

「自分がひとたび面倒を見たものに対しては、最後まで面倒を見続けるという先生の人生観が表れている。例えば政局でも、ギリギリのところまでは決して相手を追い詰めないという、先生の政治姿勢と一脈通ずる優しさでもあった。ただし、この優しさが政敵に反撃の余地を残すという意味で、しばしば先生の弱点となることもあった」

ちなみに「越山会」幹部のなかには、陳情などのお礼に盆栽を持って来る者もいた。

しかし、田中に盆栽の趣味はなく、「こいつはあの木の間に植えとけッ」と、邸内の庭にあった樹木の間に植えさせていたという。そうした何鉢かの盆栽は、その後、大木にバケてしまったそうである。

田中が全盛の頃、元日に自宅や事務所に届く年賀状は、1000枚の束が7つの計7000枚もあった。

それにまつわる逸話を秘書の一人が、こう明かしてくれたことがある。