「年収103万円の壁」の攻防戦裏で厚労省が画策! 年金制度における「月収50万円の壁」の引き上げを森永卓郎が緊急暴露

森永卓郎(C)週刊実話Web
石破茂首相が所信表明演説でも公言した年収103万円の壁の引き上げは、財務省が減税規模を圧縮に向けて、最後の攻防に入っている。

同時に厚生労働省内で検討されているのが、月収50万円の壁の引き上げだ。

働く60代後半に給付される厚生年金は、月額報酬(年収の12分の1)と厚生年金の月額給付の合計が50万円を超えると、超過分の2分の1が厚生年金から減額される「在職老齢年金制度」が適用される。

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厚生年金給付を10万円と仮定すれば、月給が40万円を超えると厚生年金の減額が始まり、60万円を超えるとゼロになる。

その仕組みが高齢者の就業を妨げていることを理由に、厚労省は現在の50万円の壁を(1)62万円に引き上げる(2)71万円に引き上げる(3)制度撤廃の3つの対策を見直しの候補に挙げるが、62万円への引き上げが最有力とみられている。

ただ、在職老齢年金制度が高齢就業を抑制していることの明確な証拠はどこにもない。

また、『賃金センサス』によると60代後半の平均月収は正社員に限っても31万円に過ぎない。

現行の壁でも大部分の人は、影響を受けていないのだ。

さらに、在職老齢年金制度には抜け穴がある。

65歳の時点で、会社との契約を雇用契約ではなく、業務委託契約に変更するのだ。

そうすると、厚生年金ではなく国民年金の対象者になるから、いくら稼いでも厚生年金の減額は受けないのだ。

この抜け穴は、人事労務の世界では公然の秘密となっており、大企業でも採用している会社が多い。

それでは、なぜいま厚労省が50万円の壁の引き上げを進めようとしているのか。

私は「マイルド官僚」のためだと考えている。