「神経が図太い男でありました」妻が垣間見た左遷、暗殺未遂すらものともしなかった佐藤栄作総理の“強運”と“孤独”
2024.12.08
議員バッジを着けず官房長官に就任
まさに、前述のコメントにもあるように、当時は運輸省でもパージ(公職追放)される幹部がおりポストが空いた、つまり「運が向いた」「機が至った」ということだったのだ。
運はさらに巡って、折から第2次内閣を発足させる吉田茂の目に止まり、47歳、ノーバッジで内閣官房長官に引き上げられるのである。議員バッジを着けずの官房長官就任は、戦後政治史でこのときの佐藤をおいて一人もいない。
その後、昭和24年に郷里の旧〈山口2区〉から衆院議員に初当選、昭和30年の「保守合同」では、政治の“師匠”ともいえる吉田と敵対した鳩山一郎が初代自民党総裁になったことで、吉田に殉じて無所属を貫いた。
翌年に鳩山が退陣し、石橋(湛山)内閣が誕生したのを機に、ここで自民党に入党している。
こうしたなかでも「胆のすわった筋を通す男」には、また運が追いかけてくるのだった。
石橋はわずか2カ月で病気退陣し、佐藤の実兄である岸が後継首相となり、その第2次内閣で大蔵大臣に就任。岸のあとの池田(勇人)第2次内閣では通産大臣となり、その池田ががん宣告を受けての退陣に際して後継に佐藤を指名、ついに政界の頂上に駆け上がったのである。
「昭和3年建造の公邸は古い官舎然としており、ネズミとゴキブリが“乱舞”しておりました。いくら強力な薬を撒いてもらっても効果なし、しまい忘れた歯ブラシの上を体長4〜5センチもあるゴキブリがはっていたこともあったのです」(寛子夫人)
東京・世田谷区代沢の私邸から公邸に移ったのは昭和44年11月、折からの東大紛争でデモ隊が私邸に押し寄せてくることがあり、身の危険と近所迷惑を避けるための“避難”であった。
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