「病院要らず」がセールストーク! 難病患者に健食やサプリを売りつけるモンスター患者の飽くなき商魂



ワラにもすがる患者に次々セールス

ちなみに、タレコミの主はサプリメントの購入を拒否した人だったという。

「安塚さんがパンフレットを見せてきた時にマルチだと分かって相手にしなかったと言っていました。言い方は悪いですけど、あれって半分詐欺みたいなものじゃないですか? それを入院患者さんに勧めるなんて、心と身体の弱みに付け込んだ悪質なやり方ですよね」

さらにA子さんを呆れさせたのは、政子さんのうたい文句が「病院要らず」だったこと。

「入院患者さんの中には治療方法に疑問を抱く人が少なからず存在しますし、ワラにもすがる思いで回復を願っている方もいるわけですよ。そんな人に医療を否定するようなことを言って、医学的根拠のないサプリを特効薬かのように説明して売りつけていたんです。『より効果的』だとか『これなら確実』などと煽って、定期コースを契約させたり、栄養ドリンクやスープなども一緒に売りつけていたようです」

病院側から厳重注意を受けた安塚さんは「良かれと思ってやったのに詐欺師扱いされた!」と憤慨し、10日間の予定だった入院を2日早く切り上げて強引に退院してしまったという。

その後病院に一切顔を出さなくなったという安塚さん。

「定期受診も投薬も無視していますね。自己責任なので本人がどうなろうと知ったことじゃないですけど、サプリを購入した患者さんから病院に苦情が来ているんですよ。皆さん、返品や解約をしたいのに安塚さんと連絡がとれないで困っているみたいです。入院の際には保証人とか緊急連絡先を聞いていますので『それを教えて欲しい』と詰め寄られたりもするんですけど、さすがに個人情報なのでできません。『だったら代わりに連絡を取って欲しい』とも言われますが、それは病院の管轄外です」

「このままでは病院の責任問題に発展しかねない」として、病棟スタッフは頭を抱えているという。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。