食事は三食ウーバーイーツ! 贅沢三昧で医療現場を混乱させた“グルメモンスター患者”の勘違い入院生活



退院パーティーも病室で

Aさんは運動に関しても特に制限はなく、基本的なバイタルチェックの他はこれといった治療も必要としなかったため、入院生活と言っても自由なものだった。

「ただ他の患者さんからクレームがたびたび来たんですよ。VIPルームがあるフロアは一般の患者さんは入れないことになっているんですけど、ウーバーイーツを受け取っているところを目撃されているんですよね。それで『特別扱いにもほどがあるんじゃないか?』とか『自分も病院食がまずくて嫌だからウーバーイーツを利用させろ』とか。一応『入院患者さんではなく付き添いの方とかお見舞いの方のために頼んでるみたいですよ』とか言ってごまかしていましたけど、本当に面倒くさかったです」

半月ほどの入院を経てAさんの退院が決まり、看護師たちがホッと胸を撫でおろしたのも束の間、Aさんはなんと「退院記念パーティー」を病室で開いていた。

「この時はウーバーイーツではなく、高級ホテルや有名レストランのケータリングでした。キャビア・フォアグラ・トリュフといった、庶民には無縁の高級食材が並んでましたね。そこに院長、担当医、看護師、看護助手など、Aさんの世話をした関係者が招待されたんです。ドンペリなんかのお酒もあって、もうめちゃくちゃですよ。誰もここが病室だとは思わないだろうな、という光景が目の前に広がっていました」

で、結局どうなったかというと…

「院長が『もう、無礼講でいいよな』というのでおいしくいただきました!」

気になるのはAさんの入院理由だが、いったい何だったのかは一部の人間にしか知らされてなかったそうだ。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。