おススメはモノ、カネ、ヒトの順! がんと闘い続ける森永卓郎が「身辺整理」の心得と極意を伝授



「ヒト」の整理は難航中

また、証券会社に預けていた株式や外貨預金などは7月11日にすべて売却した。幸いなことに、最も株価が高く、為替が円安のタイミングだったため、三千数百万円の大金が転がり込んできた。

いま私はがんの自由診療で月に100万円以上の医療費自己負担を抱えているのだが、このカネで、あと数年は治療を続けられることになった。

そして最後の身辺整理が「ヒト」、つまり人間関係の整理だ。ただ、これに関しては現状うまくいっているとは言えない。

がんが発覚して以降、人間関係がむしろ増えてしまっているからだ。20年以上会っていない元同僚から「一緒に飲もう」と誘われたり、あちこちの集まりに招待される。

一番多いのは、名医の紹介や体によい飲食料品や健康法などの治療に関するアドバイスだ。これまで寄せられた情報は、メールが来たものだけで2000件を超えている。

私は医者ではないので、どのアドバイスが正しいのか、正直言ってよく分からない。

ただ、はっきりしているのは、アドバイスをすべて守ったら、1日が300時間あっても足りないし、推奨された飲食料品をすべて摂取したら、即死するくらいの分量だということだ。

さらに、一番悩ましい人間関係は妻との繋がりだ。私は当初、もし命を落としてもすぐに立ち直れるように、妻に嫌われるような言動を繰り返してみた。

ただ、40年以上一緒にいる相手に、そうした演技は通用しなかった。

他人との人間関係は整理できても、身内の人間関係はなかなか整理できない。

それが、がんを患ったときの最大の問題点だと言えるのかもしれない。

「週刊実話」11月7・14日号より