ヤクザの娘に生まれて…交際相手は消息不明、3人の子供を育てる20代のシンママが「けっこう幸せな人生」と語る理由

父親はガン、母親も病床に…

「そんなところに縁を感じたのでしょう。お付き合いをすることになったんですが、Aが傷害事件を起こして逮捕されちゃったんです。どうやら窃盗の余罪もあったようで収監されちゃいました。堅気にはなりきれてなかったみたいですね」

ただ、Aと破局を迎えた美和さんの不運はこれだけではなかった。なんとAの因縁が彼女に襲い掛かったのである。

「Aの傷害事件の被害者で、敵対関係にあったヤクザにレイプされたんです。こいつは父のことも知っていました」

この事件が原因で、不幸にも美和さんはまたも妊娠してしまう。

「経緯がどうであれ、私のお腹に宿った以上は、上の2人と同じ私の子供です。産むことしか考えませんでした」

生まれた子供は女児だった。母親のサポートを受けながら美和さんは3人の子供を育てたが、父親がガンになり、看病をしていた母親も体調を崩してしまったため、ワンオペ生活へと突入する。

「友達からは『苦労の塊』とか言われています(笑)。病床の父からも『ヤクザの娘に生まれたばかりにしなくて良い苦労をさせて申し訳ない』とか謝られますけど、父は私のために精一杯頑張ってくれたと思うし、父のことを理由に逃げた男たちは、きっと父のことがなくてもアテにできなかったと思うから未練もありません。レイプ犯も死にました(※死亡の経緯などは割愛)ので心配もありません。何より3人もの子宝に恵まれたので、自分ではけっこう幸せな人生だと思っています」

「親が中卒だと子供が恥をかくかもしれない」と実は長女を出産後に通信制の高校に入学していた美和さんは、無事高校過程を終了し、先日介護士の資格も取得。現在は余命いくばくもない父親と寝たり起きたりの母親の面倒を見ながら、仕事と3人の育児をこなし、パワフルに暮らしている。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。