サラリーマンの味方だった中国パブに異変 “ニュー中国人富裕層”がハマるインバウンド向け高級パブ体験記

インバウンド中国人目当て「1時間8000円」の中国パブ 

中国の「夜総会(KTV)」持ち帰り前提の個室キャバクラ(中国のSNSより)
中国パプの激戦地・上野にある静かな通りに面したビルの一角、真新しい看板に重厚なドア。その扉を開けると煌びやかなシャンデリア。受付には制服姿のボーイが待ち構えており、まるで高級ホテルのロビーにいるかのような雰囲気である。

中国語で受付を済ませ、まず目に入るのは鏡のような光沢の廊下。壁にはモダンアートが並び、正面の巨大なスクリーンの横には鮮花の鉢植え。大理石をあしらったテーブルには葉巻きボックス。カラオケ設備も最新式。歌の雰囲気に合わせて変化する照明の下で、マイクに新しい飛沫防止カバーをうやうやしく被せるのは、20代前半の若い中国人ホステス数名だった。 

曲を選ぶタブレットのデフォルト言語は中国語。ドリンクの注文もできて、カクテルからワイン、さらにはシャンパンまで銘柄と値段付きで揃っていた。 

かつての中国パブの相棒だったビールや焼酎は「セット料金『1時間8000円』に含まれている」と、妙齢ママが、面倒くさそうに教えてくれた。 

2号店の時給は倍以上 

「ママは20年以上、御徒町駅の近くで1号店をやっていたが、貧乏な日本人相手では儲からなかった」 
「最近日本にやって来た中国人富裕層は日本語ができないからニーズがある。金払いが良いので宗旨替えして、高級志向の2号店をオープンした」 
「中国人相手の高級店のほうが給料が高い。若いホステスはどんどん転職するか、さっさとパトロン中国人を見つけて自分の店を開いている」 

在日二世の福建人女性B嬢が教えてくれた。彼女だけが唯一流暢な日本語を使う。「10人中1人か2人、時々来店する日本人客用のヘルプ」で、時給は「1号店の倍近く5000円に上がった」という。 

A氏のもっぱらの興味は、両脇に座るホステスではなく、B嬢だった。なぜ日本語が上手なのか? 大学は? 昼間の仕事は? 

中国や香港のカラオケで豪遊してきたA氏にとって、外見は重要ではない。B嬢が中国語は家庭で使っているだけで、日本で育ったこと。都内の短大を卒業し、昼間は旅行会社でOLをやっていること。給料まで聞き出したA氏は「育つ環境が違うと、こんなに淑女になるのか」と感心しきり。 

「中国人はすぐお金の話をして威張る。日本人に見える私にすぐ興味を持つ」と返すB嬢。観光客気分が抜けないA氏は「お前のような中国人ホステスに初めて出会った」とさらに鼻の下を伸ばす。