深セン「日本人男児刺殺事件」発生から1週間――父親の手紙と被害者の写真流出…中国の“三十六計”に陥るな

深セン日本人学校近くに設置された監視カメラ(中国のSNSより)
9月18日の朝、中国・広東省深セン市で、日本人学校に登校中の小学生男児(10歳)が刃物で襲われ、腹部を刺されて亡くなった。

悲痛な事件から1週間。日本のマスコミは意外なほど冷静な報道に徹しているが、香港や台湾などの現地メディアには「被害児童の父親が書いたとされる中国語の文章」を紹介する記事が掲載され、SNSで拡散するなど大きく報じられている。 

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現地報道によると、父親は人生の半分近くを中国で過ごした日本人で、逆に母親は日本で10年近く暮らした中国人だという。 

父親が書いた中国語の文書がまず拡散

父親が書いたとされる文章の宛先は、2人の日本人と思しき苗字に、それぞれ「先生」との敬称が付けられていた。 

概要は以下の通り。

「中国を憎むことはないし、同様に日本を憎むこともない」
「歪んだ思想を持つごく少数の卑劣な者の犯罪によって、両国の関係が破壊されることを望まない」
「(息子が)日本と中国の両国をルーツとして持っている事実は変わらない」 
「彼を守ることができなかったのは、私の一生の悔いです」 
「私の唯一の願いは、このような悲劇が二度と起こらないこと」
「今後も日中両国の相互理解のために小さな貢献をしていく。これは私の最も愛する息子への償いであり、犯人への報復でもある」 

最後は「私たちを親にしてくれてありがとう」と息子への感謝の言葉で結ばれていた。  

ところが、この文章は20日の夜から、一部閲覧できない状態になった。 

中国の人気動画投稿アプリを運営する企業が「日本と中国の対立を煽った」などとして、90あまりのアカウントを閉鎖するなどの措置をとった直後からである。 

SNS上で反日感情をあおる情報の拡散を抑える狙いがあったのは明白だが、それでも悪質で過激な投稿は止まらなかった。

しかし、父親のものとされる文章は内容を見るかぎり「対立を煽った」ものではない。したがって「捏造されたものだから閲覧できなくなくなった可能性」も考えられるが、もし捏造でないのだとしても、流出経路やその意図など看過できない問題が生じる。 

今現在、この文章の真偽は、著者の知るかぎり明らかになっていないが、亡くなった男児とされる写真もSNS上に掲載された。 

上半身裸で首からタオルをかけた10歳前後と思われる男児が、スポーツドリンク片手に、山の中の川辺で微笑む写真だ。