生放送中に痛恨の失言「トイレはCM中に行ってください」乱一世が引き越した芸能史に残る舌禍事件

不運が重なり大問題に発展  

この頃の深夜番組といえば、キー局なら消費者金融や麻雀用具、地方局だとキャバレーやラブホテルなど、ゴールデン帯では放送されないようなCMスポンサーが多くついていた(消費者金融のCMが全日放送解禁となったのは2000年代から)。言ってみれば、スポンサー側も深夜番組を頼りにしていたわけで、お互いに持ちつ持たれつという関係があったのだ。

そんな気安さが乱の軽口につながったわけだが、運の悪いことにこの日は、番組を当時の日本広告主協会の幹部が見ており、乱のCMを軽視する発言に激怒して局に厳重抗議を行った。

また、もともとテレビ朝日は同年に他の番組で、CMに入る直前に「トイレは今のうちに」との字幕を出し、スポンサー側の怒りを買っていた。

この件は一般紙やテレビのワイドショーでも取り上げられる騒動となり、『トゥナイト2』の番組関係者の多くが処分を受けた。乱はこの混乱の責任を取ることになり、当時、テレビとラジオ合わせて6本あったレギュラー番組をすべて降板。その後、2000年に同番組で復帰を果たすが、以前の勢いが失せてしまった感は否めなかった。

万事が順調なら、同じようなキャリアを歩んできたみのもんたや小倉智昭のように、大きな番組の司会を任されるぐらいの存在になっていたかもしれないが、たった一度の失言ですべて水泡に帰してしまった。

文/脇本深八

乱一世(らん・いっせい)

1950(昭和25)年4月14日生まれ。東京都出身。東海大学卒業後、ニッポン放送の深夜ラジオ番組『ザ・パンチ・パンチ・パンチ』で芸能界デビュー。明るく軽妙な語り口で若者に支持され、テレビにも進出。テレビ朝日系の『トゥナイト』や『トゥナイト2』のレポーター、テレビ東京系の『愛の貧乏脱出大作戦』のナレーションで人気を博した。