元祖“夏男”蝶野正洋が今年のG1クライマックスを振り返る「G1本来の意義を再確認するような形になった」

蝶野正洋 (C)週刊実話Web
8月18日、新日本プロレス真夏のリーグ戦「G1クライマックス」の優勝決定戦が今年も両国国技館で開催され、俺は実況中継の解説席に座らせてもらった。

Aブロックからはイギリス出身のザック・セイバーJr.選手、Bブロックは新世代の辻陽太選手が決勝戦にコマを進め、どちらが勝っても初優勝。ニューヒーローの誕生が目前に迫り、会場のお客さんの期待感がすごくて、ヘッドホンをしていても大声援が耳に入ってくるくらい盛り上がっていた。

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試合はヒール対ベビーフェイスとかではなく、両選手が全力を出して、純粋に勝敗を競っていたのが清々しかった。最近の新日本プロレスはユニット抗争や反則乱入が多かったけど、そういった因縁を意識することはなかったし、シンプルに“今夏の一番強い選手”を決めるというG1クライマックス本来の意義を再確認するような形になったと思う。

激闘の末、優勝したのはザック選手。彼は複雑な関節技を使いこなすテクニシャンで、長く日本に滞在して腕を磨いてきた苦労人でもある。 

プロレスはキャラクタービジネスの側面もあるから、アメリカ系、ヨーロッパ系、それにルチャリブレで有名なメキシコ系など、出身国によって受け継がれてきたファイトスタイルやイメージがある。

イギリス人レスラーは、紳士的だけどちょっとプライドが高くて、他国の選手をナチュラルに上から見下すというのが典型的なキャラクター。でも、ザック選手や今の若い世代は、もはやそんなイメージにとらわれていない。観客側にも国籍による偏見がないし、本当にグローバルになったと思う。

プロレスは社会の縮図とよく言うけど、これは今の世間がそういう感覚になってきているということ。優秀な人間なら国籍を問わずチャンスがあるし、周りも自然に応援する。その象徴のような外国人選手が優勝して、これからの新日本プロレスを引っ張っていくというのは、すごくいいことだよね。