元祖“夏男”蝶野正洋が今年のG1クライマックスを振り返る「G1本来の意義を再確認するような形になった」

負けて泣き叫んだ阿部詩選手は五輪の象徴

パリ五輪を見ていても思ったけど、いまや見た目だけではどこの国の選手か分からない。それでも選手が国やチームを背負って、ひたむきに勝利を目指す姿が感動を呼ぶ。 

柔道の阿部詩選手がまさかの2回戦負けをして、その場で泣き叫んだことが物議を醸したけど、俺はあの姿を見て、詩選手がどれだけ想いを込めて頑張ってきたのかが伝わったし、あれがオリンピックだなって思ったんだよね。

柔道をやっていたウチの子供が試合で負け、悔しくて泣いてるのを見た俺は「泣くな」と止めたことがあるんだけど、先生に「感情を表に出すのは大事なことだから、心配しないで泣かせてあげてください」と言われたことを思い出した。

昔は負けて泣くのはみっともないとか、勝って喜ぶことも控えなさいというような風潮があった。だけど最近は、素直に感情を表現することも含めてスポーツという考え方に変わってきてるんだよね。

感情が伝わる選手というのは、プロレスラーに向いている。今回のオリンピックには、心を揺さぶられるような感情表現が豊かな選手がたくさんいたから、ぜひプロレス界にスカウトしたいね。 

蝶野正洋(ちょうの・まさひろ)

1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。