“トランス女性”からの性被害を受けた20代女性 2人きりの出張先で起きた悪夢「半年もの間、騙されていた」

Aが衝撃の告白「私はレズビアンなの」

ツインルームに宿泊することになった2人。その日は取引先へのプレゼンで心身共に疲れ切っていた弘香さんは早々にベッドへ入ったのだが、夜中に何とも言えない重苦しさに目を覚ました。

「裸のAが私の上に乗っていたのです。私が目を覚ましたことに気付いたAは『私はレズビアンなの』と言い、片手で私の口を塞ぐと浴衣をはぎとりました。その荒々しい動きもそうですが、身体は完全に男性でした。胸もぺったんこだったし、下半身も完全に男のまま。さらに『抵抗してもムダだよ』と私を脅す声も男性そのもので、私が知っている普段のAとはすべてが別人でした。そこで私は半年もの間、Aに騙されていたことに気付いたのです」

弘香さんは出張から戻ると会社にAの犯罪を告発。

「追って連絡する」と言われて自宅待機していた弘香さんのところにやって来たのは、コンプライアンス室の室長と本社の顧問弁護士だった。

「そこで初めてAが本社重役の身内だと知らされ『立場上、警察沙汰にできないので和解金で勘弁してもらいたい』と言われました。当然、私は却下しましたが、事件が公になれば今の職場にはいられなくなるし、間違いなくセカンドレイプに晒される。さらにこの事件で会社のイメージが損なわれた場合は、逆に訴えられて多額の損害賠償を支払うことになる…などと脅されました。Aはパイプカットをしているし、定期的に性病の検査も受けているので妊娠や病気の可能性もない…ここまで言われたら、引き下がるしかありません」

弘香さんは「私も処女だったわけではないし、犬に噛まれたとでも思って忘れた方が良い」と自分に言い聞かせ、慰謝料(和解金ではない)を受け取ってすべてを「無かったことにした」という。

「慰謝料の金額については言えませんが、私の年収を軽く超えるものでした」

驚いたことに、Aは今でも弘香さんと一緒に働いている。

「さすがに同じ部署ではありませんが、社内で顏を合わせることは時々あります。Aの顏を見て平常心を保つことは容易ではありませんが『動揺したら負け』と思って毅然とやり過ごしています」

Aが二度と同じ犯罪を犯さないことを祈るばかりである。

取材・文/清水芽々

清水芽々(しみず・めめ)

1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。