「南海トラフ巨大地震」猛暑の真夏に起これば想定以上の死者数に

「いつ本震が発生しても不思議ではない」

防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。

「南海トラフ地震の震源域(豊後水道)で、このような大地震が起きたことを考えれば、いつ本震が発生しても不思議ではない。私は宮崎県東部の日向灘沖辺りから割れだす(発生する)ことになるとみています」

前出の科学ライターも、こう指摘する。

「実は、気象庁には南海トラフ沿いでM6.8以上の揺れが観測された場合、南海トラフ地震との関連性を伝える『地震臨時情報』を出すとした取り決めがある。豊後水道で発生した地震は、マグニチュードこそわずかに足りなかったが、ほぼこの状況に当てはまるのです」

ちなみに同地震が起きた場合、被害に遭うのは南海トラフが延びる東海から九州沿岸部にかけての地域と思われがちだが、首都直下地震と連動する恐れもあるという。

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が解説する。

「その証左となるのが、江戸時代末期の1854年に起きた安政東海地震(M8.4)です。同地震は駿河湾から遠州灘沖、熊野灘を震源として発生したが、32時間後に今度は紀伊半島から四国にかけて安政南海地震(M8.4)が発生。翌年11月には首都直下地震にあたる安政江戸地震が誘発され、1万人余りが死亡した。そのため、現在は南海トラフ地震に加え、首都直下地震も危惧されているのです」

なんとも恐ろしい話だが、こうした見解は今や政府や地震学会でも定説になりつつあるという。