「投票するヤツはアホや」傷害事件、無免許運転、泥酔テレビ出演…破天荒芸人・横山やすしが相方にイチャモン!

天才芸人と呼ばれたやすしの“晩年の苦悩”


片や、きよしは86年の参院選に出馬し、当選を果たす。

きよし出馬に際して、やすしは「投票するヤツはアホや」といちゃもんをつけたが、これは政治に関する経験不足への心配と、落選したほうが漫才をやりやすいとの思いがあってのことで、「キー坊とはずっと一緒にやってきたんや」とも話していた。

だが、趣味のボートやセスナに没頭し、不摂生から吐血して入院する様子は、どこか世捨て人のようでもあった。

 さらに、88年には「一八に賭けとんねん。これからもっと大きなる」と夢を託してきた息子の木村一八がタクシー運転手に暴行し、少年院送りとなる。

やすしは会見で「自分の教育が間違っていた」と嗚咽し、自ら無期限謹慎を申し出た。

 やすしの酒量は増える一方で、医者からは「今の調子で飲んでいたら死にますよ」と言われたが、「ビールならええでしょ」と飲み続けた。

89年3月には久々にきよしと共演を果たして「今度こそ心を入れ替えて頑張ります」と復帰を宣言したが、それからわずか1カ月後、またしてもビールを飲んで車を運転した上、バイク相手に人身事故を起こしてしまう。

 これで吉本興業から完全にクビを言い渡されたやすしは、ファンに向けて「やんちゃな横山やから、辛抱してもらうしか手ぇないがな」と話したものの、記者からの「もう漫才はやらないのか?」との質問には、半泣きになりながら「やめる…」と声を絞り出した。

 その後はVシネマへの出演などで糊口をしのぎつつ、92年7月には参院選に出馬するも落選。「国民がアホや!」との敗戦の弁を残した。

選挙との関連は不明ながら、同年8月には何者かから暴行を受けて一時は失語症となり、最大の武器であるしゃべくりもおぼつかなくなってしまう。

 96年1月、自宅でビールを飲んでいた際に嘔吐して、その夜はいったん床に就いたが、二度と目を開けることはなかった。

51歳とは思えぬ老け具合は、やすし晩年の苦悩を表しているようだった。  

◆横山やすし(よこやま・やすし)
1944年3月18日生まれ。高知県出身。66年に西川きよしと漫才コンビを結成。「やっさん」の愛称で親しまれ、天才的な話芸で全国区の人気を誇った。タクシー運転手への傷害事件、無免許運転、泥酔でのテレビ出演などトラブルも多く、89年の飲酒運転事故により吉本興業から解雇された。96年1月21日、51歳没。