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プロ野球13番目のチームは「JP東海」!? 交渉進んだ背景に「リニア問題」の進展か

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(画像)YMZK-Photo/Shutterstock

「球団拡張(エクスパンション)」で進展があった。静岡市を拠点にプロ野球の新二軍球団創設が進められているが、それを一軍に移行して、セ・パ計13球団とする仰天プランが浮上したのだ。背景にあるのは、リニア問題。サッカー王国でプロ野球は共存できるのか?

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「JR東海」が静岡県を拠点に新球団を設立するプランが浮上した。リニア問題で川勝知事と「事業推進」で急転和解。2024年誕生の当地二軍限定球団の受け皿となる。セ・パ計13球団で令和の球界再編が―。

「静岡県内区間のリニア着工は認められない、としてきた知事が推進派に転じました。JR東海が親会社となる形で、静岡にプロ野球球団を設立するプランが落としどころとして浮上したのです」(地元財界首脳)

4月12日、同1日に就任したJR東海の丹羽俊介社長が、前社長の金子慎会長を伴って静岡県庁を表敬訪問。川勝平太知事に社長交代の挨拶をするとともに、30分にわたって非公開で意見交換し、リニアの早期開業への理解と協力を求めた。

県とJR東海の〝トップ会談〟は、国土交通省が仲介する形で過去にもあったが、知事が歩み寄りを拒否。しかし今回、知事は「ウィンウィンの関係ですからね、なるべく国民、県民のためになるように協力していきたい」と応じた。この席で、魅力的な〝バーター案〟が示されたのだという。

日本野球機構(NPB)は二軍のリーグ拡大構想に伴い、5月から新規参入チームの申請を受け付ける。2024年参入チームは今年7月末、25年参入は同8月末の締め切りとなる。

リニア開通を急ぐJR東海

すでに前者の応募を表明しているのが、静岡市の「清水庵原球場」(収容・1万人)を拠点に参入を目指す、都内で金融事業を手掛ける「ハヤテグループ」(杉原行洋代表、東京都中央区)だ。

地元静岡の期待感は高まっているが、一軍を持たない球団設立には「二軍の観客動員数だけで、事業として成り立つのか」と危惧する声も多い。しかし、しっかりとした一軍球団の受け皿があれば話は違ってくる。

「ハヤテグループは投資会社。新規参入の狙いは、二軍球団を一軍のそれにバージョンアップし、売却して利ざやを稼ぐことにある。その点、リニア中央新幹線の開通を急ぐJR東海なら、これ以上の相手はない。当初からそれを見込んでいたとの情報もある」(NPB関係者)

JR東海は、名古屋市にJR東海硬式野球部を有している。1921年に名古屋鉄道局として発足した社会人野球の最古参チームの一つだ。

ここを母体にグループ企業のJR東日本、JR西日本などから選手を集めれば、ドラフトに頼らなくとも、二軍だけの球団でも強化が図れる。一軍参戦の準備も整えられる。

東京・品川から名古屋、大阪までの三大都市圏を約1時間で結ぶリニア中央新幹線は、2027年の東京-名古屋開業(大阪-名古屋開業は45年)を目指し、JR東海が総力を挙げて工事を続けている。だが、静岡県内区間の工事については県の理解が得られておらず、開通延期が避けられない状況だ。

トンネル工事の影響や、トンネル完成後も南アルプスの地下水が漏れ、県中西部を流れる大井川の水量が減少する――この「水問題」こそが知事が反対する表向きの理由だが、根源は別のところにあるという。

「リニアの〝静岡県素通り〟です。もともとリニア推進派だった知事が反対に転じたのは、10年前に県の北端、南アルプスを通るルートに決まってからです。各県1駅設置のはずが、静岡県だけ駅が置かれず、恩恵がゼロに。その上、水問題だけ押し付けられてはたまったものじゃないと」(国会議員秘書)

プロ球団誘致は前市長の悲願だった

さらに、地元メディアによれば、水面下で「のぞみの静岡駅停車」「富士山静岡空港(牧之原市・島田市)直結の新駅建設」のバーター案が協議されたが、県内にはすでに熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松の6駅が存在。各駅間の距離も近いことから、色良い回答は得られなかった。

「とりわけ知事が強く求めたのは、富士山静岡空港の新駅です。東海道新幹線と飛行機をつなぐことができれば、リニアがなくとも、県外、海外とのアクセスが向上します。しかし、受け入れられず、そこで落としどころに浮上したのがJR東海が主体となって設立するプロ野球球団創設です。これなら地域振興・地域活性が図れるし、事業として成り立ちます」(同)

浮上したのは、清水庵原球場は二軍の本拠地に使い、JR東海が主体になって設立する一軍新球団が、静岡市の草薙球場(収容・2万1656人)と県が整備を検討している浜松市の新球場をダブルフランチャイズにするプランだ。

静岡市のプロ野球球団誘致は、今年4月に市長を退いた田辺信宏氏(自民党)が、11年に立候補した際の選挙公約でスタート。しかし、民主党系の川勝知事と政策的にそりが合わず、市県一体となった球団誘致が進まなかった。

そこで田辺氏は4選を自ら断念。4月9日投開票の市長選で元副知事で川勝氏側近の難波喬司氏(自民、立民、公明、国民推薦)を与野党相乗りで担ぎ、当選に導いた。身を切る決断で敵陣営の副将を籠絡し、これまでなかった知事とのホットラインを使い、公約を果たそうとしているのだ。

かつて西武ライオンズは、プロ野球参入準備で、グループ会社のプリンスホテルに社会人野球チームを創設。福岡ダイエーホークスも、西武から根本陸夫管理部長(故人)を招いてローソン硬式野球部を設立して、こんにちのソフトバンクホークスの基盤を築いた。JRグループの後ろ盾があれば、静岡に誕生する新球団も成功は約束されたも同然だ。

NPBはリニア開通に合わせてセ・パ13球団に移行し、最終的に自民党が地方活性化案として提言した「16球団」までエクスパンションを進める方針だ。令和の球界再編が始まった。

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