蝶野正洋『黒の履歴書』〜「武藤敬司引退試合」限界ギリギリだった“奇跡の1分37秒”

2月21日、東京ドームで行われた「武藤敬司引退試合」。そもそも俺は実況解説として呼ばれていたんだけど、事前に請け負っていた大役が二つあった。一つは、東京ドームの長い花道を歩いてリングに入場すること。 ご存知の通り、俺は脊柱管狭窄症の手術をしてからまだ完全に回復していない。普段は杖をついて歩いているが、この日はせめて背筋を伸ばして歩きたいと数週間前から治療プランを考え、前日には痛み止めの注射を打って備えていた。だから「久しぶりの東京ドームの花道、どうでしたか?」と聞かれるけど、こっちは歩...