短期集中連載『色街のいま』第9回「東京・鶯谷」~ノンフィクション作家・八木澤高明

なんとも風流な名の付いた土地だなと思う。実際の姿とは、ここまでかけ離れた土地の名も珍しい。東京を代表する猥雑な街とも言われる、鶯谷のことである。 その名の起こりは、江戸時代にまでさかのぼるという。この辺りは上野寛永寺の寺領で、京都からやって来た住職が「江戸では鶯までも訛っている」と言ったことから、その名が付いた。 【関連】短期集中連載『色街のいま』第8回「南関東の温泉地」~ノンフィクション作家・八木澤高明 ほか 私は幾度となく鶯谷を歩いてきたが、せわしなく行き交う人々の靴音と電...