『これやこの』(角川書店:サンキュータツオ 本体価格1400円)~本好きのリビドー快楽の1冊

寄席に出演しない立川流の噺家で、知名度で群を抜いているのは志の輔、談春、志らくと皆、家元談志が落語協会を脱退した後の弟子ばかりが売れているように見えるかもしれない。だが、古くからの高弟もそれぞれ得難く渋い個性の持ち主なのは当然で、中でも忘れられないのが立川左談次。 古典落語のあいまに「後頭部(江東区)深川」「ないがしろ(前頭)三枚目」などとダジャレをさりげなく放り込む軽みに満ちた高座ぶりはもちろん、本を数冊抱えて現れ、ひたすら記述のおかしさをぼやき気味にあげつらってゆく『読書日記』のよう...