「今夜は飲み尽くす」田中角栄の事件史外伝『炭管事件と獄中立候補』Part5~政治評論家・小林吉弥

昭和24(1949)年1月13日。上野発新潟行きの上越線夜行列車に、なにやらせわしげな男が2人乗っていた。 1人は、前民主自由党代議士にして前法務政務次官の田中角栄、もう1人は田中の秘書の曳田照治であった。田中はこの日の朝、小菅の東京拘置所を保釈で出たばかりであった。 田中は保釈されるとまず、拘置所に差し入れにきてくれていた花街・神楽坂の芸者置屋「金満津」に、あいさつに向かった。「金満津」は、自らが“旦那”となって間がなかった、お抱え芸者の「円弥」がいる置屋である。「円弥」はやがて芸者...